世界の考古学史
1.はじめに
考古学は人文科学のなかでは、歴史の浅い学問である。ギリシア、中国などの古代文明においても、考古学資料に対する人々の興味と関心が持たれていたものの、その多くは古物に対する好奇心であり、体系的な学問として成立するのは19世紀半ばのことである。150年ほどの歴史しか持っていない。ヨーロッパにおいて、ルネサンスに始まる古代への憧れの風潮と産業革命に象徴される近代化のなかで誕生した学問ということができよう。本稿では考古学がどのようにして体系化され、発展していったのかを述べていきたいと思う。
2.古典考古学
西欧文明ルーツのギリシア・ローマ文明に対して17~18世紀の欧州知識人は伝統的に深い関心を寄せていた。こうした中で、ギリシアとローマの古典及び聖書に記録されていることを、実際の遺跡で具体的に確認する「古典考古学」がまず成立する。18世紀にj.j.ヴィンケルマンにより方法論的にも確立された。彼の著書『古代美術史』(1764)は、遺物の観察と比較に基づく研究を行った最初の歴史書物である。
この頃、ヨーロッパ各国の宮廷をはじめとする貴族社会においては「古代への憧れ」...