甲は貨物自動車の助手席に乙を乗せて業務として運転し、走行中ハンドル操作を誤り信号柱に激突、乙は負傷した。さらに、甲の知らない内に荷台に乗り込んでいた丙と丁がこの事故のより死亡した。甲の罪責はどうか。
「無謀とも言うべき自動車運転をすれば人の死傷を伴ういかなる事故を惹起するかもしれないことは、当然認識しえた者というべきであるから、例え被告人が自車の後部荷台に前記両名が乗車している事実を認識していなかったとしても、右両名に関する業務上過失致死罪の成立を防げないと解す」
→荷台への乗車は認識できないとしても
→無謀な運転をすればおよそ人の死傷の惹起することは認識できる。(法定的符号説)
→およそ人の死についての予見可能性あり
→業務上過失致死罪が成立
刑法演習
問題1 甲は貨物自動車の助手席に乙を乗せて業務として運転し、走行中ハンドル操作を誤り信号柱に激突、乙は負傷した。さらに、甲の知らない内に荷台に乗り込んでいた丙と丁がこの事故のより死亡した。甲の罪責はどうか。
問題提起 甲は乙に対しての業務上過失傷害罪(211条)が成立するのに争いはない。それでは、丙丁に対する業務上過失致死罪(211条)も成立するのか?
問題点 甲に丙丁の死亡につき過失があったといえるかどうか?
過失 = 客観的注意義務違反(実行行為) + 主観的注意義務違反(責任)
注意義務違反 = 予見義務違反 + 結果回避義務違反
1.予見義務違反 予見可能性が前提
具体的予見可能性(S51.3.18)⇔不安感(S48.11.28)※ドライミルク事件
→具体的予見可能性が必要
∵ 予見可能性を軽視し過失犯処罰を拡大することは過失が道義的責任をも基礎づけることを軽視し、責任主義に反する恐れがある。
→具体性 cf.具体的事実の錯誤
・およそ人の死の予見性で十分(法定的符号説)
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