<国会議員の発言によって名誉を毀損された国民は、その議員の法的責任を追及することができるか>
1.憲法51条は、「両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない」と規定している。
この免責特権の趣旨については、議員の院内における言論の自由を最大限に保障し、院外での責任を免除することにより議員の活動の自由を行政権・司法権による不当な干渉から守ることを目的としたものであると解する。
「全国民の代表」としての国会議員の職務は重要なものであり、こうした特権が認められることにより、議員はその職務を十分に果たすことができ、また、政府が院外の警察力などを利用して反対党議員を弾圧するなどのことが阻止されるからである。
2.国会議員は免責特権を有しているが、国会議員が議院内で行った発言が私人の名誉権・プライバシー権を侵害すると認められる場合、国会議員自体が民事上又は刑事上の責任をまったく負わないか。
この点、議員の免責特権は、議院の自律権に付随して「国民の福利」のために平等原則を部分的に犠牲にして、政策的に認められたものであるから、特権の効果も「国民の福利」のためということを基本に据えて憲法の全体構造ないし他の憲法規定と調和するよう解釈・運用されなければならないと考え、国民の名誉権・プライバシー権もマスメディアが驚異的に発達した現代社会においては、新しい人権として憲法13条の保障を受けると解されるから、議員の免責特権にも一定の限界があると解すべきで、免責特権を政策的なものと解するのであれば、名誉権・プライバシー権の侵害が特権により適法とされるわけではなく、一定の厳格な要件の下に議員個人の民事責任を認める余地があるとする説がある。
しかし、厳格な要件の下ではあっても、議員の民事責任を追及できるとすることは、議員の自由な言論活動を萎縮させ、議員の活動の妨げとなり、あるいはその議員の政敵に攻撃の手段を与えることとなるおそれがある。
<国会議員の発言によって名誉を毀損された国民は、その議員の法的責任を追及することができるか>
1.憲法51条は、「両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない」と規定している。
この免責特権の趣旨については、議員の院内における言論の自由を最大限に保障し、院外での責任を免除することにより議員の活動の自由を行政権・司法権による不当な干渉から守ることを目的としたものであると解する。
「全国民の代表」としての国会議員の職務は重要なものであり、こうした特権が認められることにより、議員はその職務を十分に果たすことができ、また、政府が院外の警察力などを利用して反対党議員を弾...