(1)マーシャルとケインズの関係
アルフレッド・マーシャルとジョン・メイナード・ケインズ。前者はスミス、ミル、リカードといったイギリスにおける伝統的な経済学を継承しつつ発展させ新古典派経済学を形成し、後者はこの新古典派経済学を猛烈に批判し新たな経済学の体系を築き「革命」とまでいわれるほどの学問上の大変革を成し遂げた。この、ともに大きな業績を上げ、その理論上は宿敵同士ともいえる二人の経済学者が実は個人的に非常に密接な関係にあったというところから二人の比較と分析を始めたい。
まずマーシャルとケインズはケンブリッジ大学で経済学の師弟の関係にあった。さらに父がケンブリッジの教授でマーシャルの同僚であることからケインズは子供の頃からマーシャルの家に出入りしマーシャルとその夫人から可愛がられていた。マーシャルはケインズがケンブリッジで職を得られるよう尽力したこともあるし、さらにその後もマーシャルはケインズの生活費の補充として自らのポケットマネーから年百ポンドを与え続けていたのである。
このようにマーシャルから寵愛を受けたケインズであったが一方で彼はマーシャルのことを次のように言っている。「きわめて偉大な人物だ。しかし彼は個人的な性格においてはむしろ、ばかげた人物だと思う。」さらにマーシャルの主著「経済学原理」についても「君はまだ気がつかないのかい、あれは空っぽの本だよ。」といったとハロッドは記している。後に「私は正統派(=新古典派)の要塞の中で育てられたので、その権威も力も十分承知している。」といって新古典派とそれを築いたマーシャルの理論を徹底的に攻撃したケインズにとって恩師マーシャルは個人的にも憎むべき人物であったのであろうか。
一方でケインズは教え子であるがゆえに批判も厳しくならざるを得なかったとマーシャルへの批判の誇張を認めている。
市場と社会レポート
マーシャルとケインズ
その時代と彼らの使命
(1)マーシャルとケインズの関係
アルフレッド・マーシャルとジョン・メイナード・ケインズ。前者はスミス、ミル、リカードといったイギリスにおける伝統的な経済学を継承しつつ発展させ新古典派経済学を形成し、後者はこの新古典派経済学を猛烈に批判し新たな経済学の体系を築き「革命」とまでいわれるほどの学問上の大変革を成し遂げた。この、ともに大きな業績を上げ、その理論上は宿敵同士ともいえる二人の経済学者が実は個人的に非常に密接な関係にあったというところから二人の比較と分析を始めたい。
まずマーシャルとケインズはケンブリッジ大学で経済学の師弟の関係にあった。さらに父がケンブリッジの教授でマーシャルの同僚であることからケインズは子供の頃からマーシャルの家に出入りしマーシャルとその夫人から可愛がられていた。マーシャルはケインズがケンブリッジで職を得られるよう尽力したこともあるし、さらにその後もマーシャルはケインズの生活費の補充として自らのポケットマネーから年百ポンドを与え続けていたのである。
このようにマーシャルから寵愛を受けたケインズであっ...