1.はじめに
2006年に国連で採択された「障害者の権利に関する条約」のように、近年、障害者の権利を見直し、擁護しようとする動きが世界的に活発になってきている。これに合わせて、障害者に対する社会的サポートの幅も広がっている。また、ジェンダーに関しても男女が共に平等な責任を担う社会作りの努力がなされており、日本では「育児・介護休業法」や「男女共同参画社会基本法」の制定などにその成果が見られる。しかし、こうした動きにもかかわらず障害者、特に障害児に対するケアの多くは依然として母親が担っており、障害児に対する障害者福祉は母親が全面的に子どもに付き添い、支援することが前提となっているように思われる。
なぜ障害者福祉やジェンダーをめぐる社会の動きが活発になっているにも関わらず、障害児に対するケアの多くを母親が担うような状況が続いているのか。また、このことを踏まえた上で、障害児と家族に対して今後障害者福祉はどのような方向に向かっていくべきなのかについて考察してみた。
2.ジェンダー規範と障害者福祉
固定的なケアをめぐるジェンダー規範が根強く維持されている主な理由は、家庭内外で女性を絶えずケアを行...