一. 定住外国人地方選挙権訴訟判決について
1. 争点
(1) 原審において原告は、まず日本国憲法前文の規定からは、地球上にいる人はどこか一箇所で自分の属する地域の政治に参加すべきであるとの原則が導かれると述べ、そのどこか一箇所とは参政権の性質上、その人が定住している地域でなければならないから、憲法15条1項の「国民」概念には、日本国内における定住者が含まれる、と述べている。また、憲法93条2項所定の「住民」概念についても、地方政治レベルの参政権は、限定された共同体におおいて、共同生活上の利害関係について共同決定するという趣旨からして、当該地域の定住者のみならず「居住者」も含まれると主張している。
(2) 原告の上記主張に対して原審は、日本国憲法前文は国民主権、平和主義及び国際協調主義等の憲法の基本原理を明らかにしているが、そのことから直ちに、地球上にいる人はどこか一箇所で自分の属する地域の政治に参加すべきであり、そのどこか一箇所とは、その人が定住している地域でなければならないとの原則が導き出されるものとはいえないとしている。
そして、憲法93条2項の「住民」は、15条1項の「国民」と統一的に理解すべきであり、ここにいう「住民」は日本「国民」であることがその前提となっていると判断した。
(3) 原告らはこれを不服として上告した。上告理由は、?憲法15条1項にいう「国民」には定住外国人が含まれ、93条2項にいう「住民」には当該地域の居住者である限り外国人が含まれると解すべきであるから、原判決の解釈には誤りがあり、?仮に地方自治法11条、18条、公職選挙法(以下、公選法と称する)9条2項にいう「日本国民」が日本国籍を有する者を意味するとすれば、右各規定は憲法15条1項及び93条2項に違反して無効である、としている。
憲法Ⅰ
【定住外国人地方選挙権訴訟判決と「よど号」新聞記事抹消事件判決を読み比べて】
一. 定住外国人地方選挙権訴訟判決について
1. 争点
(1) 原審において原告は、まず日本国憲法前文の規定からは、地球上にいる人はどこか一箇所で自分の属する地域の政治に参加すべきであるとの原則が導かれると述べ、そのどこか一箇所とは参政権の性質上、その人が定住している地域でなければならないから、憲法15条1項の「国民」概念には、日本国内における定住者が含まれる、と述べている。また、憲法93条2項所定の「住民」概念についても、地方政治レベルの参政権は、限定された共同体におおいて、共同生活上の利害関係について共同決定するという趣旨からして、当該地域の定住者のみならず「居住者」も含まれると主張している。
(2) 原告の上記主張に対して原審は、日本国憲法前文は国民主権、平和主義及び国際協調主義等の憲法の基本原理を明らかにしているが、そのことから直ちに、地球上にいる人はどこか一箇所で自分の属する地域の政治に参加すべきであり、そのどこか一箇所とは、その人が定住している地域でなければならないとの原則が導き出される...