治思想史上の屈指の古典。
この作品全体を貫くテーマは「正義とは何か」であるが、「正義とは強者の利益に他ならない」といった当時のさまざまな制議論を批判・検討した上でプラトンの自説が展開されている。まずプラトンは正義とは人間の魂の一定の状態にかかるものだというソクラテス的主張をしている。しかし、同時にプラトンは、この探求をいきなり行うことは困難だと主張し、同じく正義の実現が話題になるポリスというより大きな対象でそれを検討するのが好ましいというように議論をする。ここに、正義論はポリス論、理想のポリス論へと展開されることになる。
理想のポリスは三つの階層から構成される。まず、経済活動に専念する巨大な階層があり、それを守護層が守り、指導するという構造である。『ポリテイア』のかなりの部分は軍事に携わる補助者層と政治に携わる本当の守護者という広い意味での守護者層に向けられている。
まず、守護者層に属する人間は素質面で優れていなければならず、そのために結婚の統制が行われる。
次に、彼は極めて具体的に初等教育のためのプログラムを論じ、ホメロス以来の教材の中には好ましくないものが少なくないと厳しい批判を加えている。
最後に、プラトンは守護者層は家を持ってはならないこと、財産および女性(男性)・子供は共有でなければならないと主張した。<プラトンの共産主義>
1.プラトン
a ポリスの政治学-政治イメージの原型-
ヨーロッパの政治思想についての理解にとって最も重要なのは、その政治についての見解であり、この見解はギリシアの政治論において初めて自覚的に展開され、構成に継承された。ギリシアやローマの政治論が久しく古典としての位置を占めることとなったのはこのためである。ギリシア人が自らの治体制の特質を自覚したのはペルシャとの比較においてであり、ペルシャ戦争はそうした自覚を高める上で重要な役割を果たした。
ペルシャの政治体制⇒多数の人間が恐怖と鞭によって一人の人間(王)に服従する体制。いわば、一人の主人に多くの奴隷が従属しているに等しいもの(・デスポティズム)
一人の人間だけが自由
ギリシアの政治体制(ポリス)⇒(nomos)の下に団結した自由人の共同体としてイメージされる
若干の人間が自由(奴隷は除く)
したがって、後者においては、支配服従関係はあくまでこの共同体を前提にし、法に即したものであり、決して前者のように特定人物への服従がすべてではなかった。この違いは決して量的なものだけではなく、後者は自由な人間が互いにひとつの政治共同体を形成するのに対...