『日本とアメリカの老人ホームの特色や相違点について概説し、わが国の老人福祉施設をめぐる今日的課題について述べよ。』
これまでわが国では、特別養護老人ホームに入所するために、「措置」という行政が高齢者の身体状況や家庭の事情を調査し、これにより入所が決定され、サービスの内容や職員の配置についても、行政が一方的に決定する仕組みであった。また、経営費についても「措置費」という国の税金によってまかなわれ、建設費も大部分が税金であった。
日本の老人ホームは、このように税金を基に造られ、ほとんどが都道府県から厳しく指導監査を受けている「社会福祉法人」が運営する民間の施設であった。そのため、利用者1人当たり1ヶ月何万円という「措置費」が確実に交付され、利用者の介護を一生懸命してもしなくても、交付される金額には全く影響がないことから、競争原理や市場原理がほとんど機能しなかったのである。
アメリカの福祉施設は、日本の福祉施設と比較すると、競争原理が浸透しているという最大の相違点がある。アメリカでは、競争原理があるため、評判のよい優れた老人ホームは費用も高くなるが、高い分だけ内容もよくなり、利用者は増える仕...