はじめに
一九八二年から雑誌で書かれ、一九八五年に出版された『魔女の宅急便』。私はジブリのアニメーション映画でしか知らなかったが、この機会に一度読んでみようと思い立ち、ようやっと本を手に取ることができた。「魔女」は児童文学の中でも割とよく目にする言葉であり、登場人物だ。その描き方は作者それぞれである。が、やはり書かれた年代が違えばそれぞれの書き表そうとしていたものが何であるのか、時間が経ち、振り返ることで見えてくるものがあると感じた。
そこで私は今回、『魔女の宅急便』と、二〇〇四年と比較的最近出版された『魔女モティ』という二つの離れた時代に書かれた物語を読み解くことで、この2つの作品の中の魔女は何を語りたかったのか、考察していこうと思う。
少女
まず『魔女の宅急便』であるが、この物語は魔女の少女キキが十三歳の誕生日をむかえ、「ひとり立ち」するために魔女のいない初めての地に降り立つ。彼女が懸命に考えて自立するために始めた仕事は、ほうきで空を飛んで荷物を届ける宅急便屋さんであった。ミスをしておちこんだりしながらも元気に生きるキキは、荷物を運びながら大事なことを発見していく。というあら...