ヨーロッパにおけるサスティナブルな都市政策
本論文は、ヨーロッパ、特にEUにおける都市政策について簡潔にまとめたものである。EUは環境政策の一環として持続可能な都市を目指しており、その空間形態として提起され、推進されている都市政策モデルがコンパクトシティである。
コンパクトシティとは、大雑把にいえば拡大を制限した都市のことであり、そこにはハワードが提唱した田園都市構想との共通点が見いだせる。そこでまず、イギリスの都市パターンの進化をなぞり、コンパクトシティがどのようなコンテクストから提唱されるようになったのかをみていくことにしよう。
1750年以前は中世都市の時代である。中世都市は、高密・コンパクトで、街路が狭い城郭都市だった。ここには外敵の侵入を防ぐという軍事的意味もある。また、どの都市もマーケットの立つ広場を有しており、定期的な市が開かれていた。ブリュッセルのグランプラス広場やイタリア・シエナのカンポ広場はこの例である。ここでのマーケットは、情報交換の場としても機能していた。また、この時代は市民社会の象徴ともいえるギルドが興隆した時代でもあり、国家に対する市民の成長がうかがえ...