物上代位とは抵当権の目的物が滅失した場合でも、それが債権などの形に転化していれば、それに対して抵当権が及ぶ。372条で先取特権に関する304条が準用されるが、まだ問題がある。l 通説:賃料は304条の文言通り、物上代位の対象である。
l 否定説:賃料は304条の文言通り、物上代位の対象である。しかし、抵当権は設定者に目的物の使用・収益を認めるものである。そこで、果実に抵当権の効力が及ばないことを定める改正前371条の解釈論として、法廷果実である賃料には抵当権の効力を及ばず、賃料は原則として物上代位の対象にはならない。それも近時の有力説である。
l 判例は賃料も物上代位の対象になることを一般的に認めた(最判平成1・10・27民集43・9・1007)。これは1990年代のバブル経済崩壊によって土地建物の担保価値が著しく低下したために注目された債権回収方法である。
l 民法改正:2003年に民法371条を改正して、抵当権が債務不履行後に生じた抵当不動産の果実にも及ぶとされる。同時に民事執行法において抵当不動産からの収益によって債権を回収するための担保不動産収益執行の手続が導入された(民事執行法188条)。
物上代位を行使するためには、価値代表物を払渡前または引渡前に差押えることが必要だ。物上代位の差押えという論点をめぐって、三つの学説がある。
l 特性維持説:304条の差押えは目的物を特定し、債務者の他の財産と価値代表物を混同してしまうことを防ぐ。
l 第三者保護説(優先保全説):304条の差押えは抵当権者が自ら物上代位権を公示して、優先性を確保するために必要だ。
l 第三債務者保護説:304条1項但書の差押えを要求する趣旨を、二重弁済の危険から第三債務者を保護する必要がある。判例はその説を採った。
物上代位について
①賃料債権に物上代位することができるか。
②物上代位の要件としての「引渡前に差押える」について、抵当権者はいつまで物上代位権を行使するか。
③一般債務者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押えが競合した場合、いずれかが優先するか。
④抵当権者が物上代位を行使して賃料債権を差押えたあと、抵当不動産の賃借人は敷金で賃料を充当できるか。
⑤担保不動産収益執行と物上代位は重ねる場合、いずれか優先するか。
(1)物上代位とは抵当権の目的物が滅失した場合でも、それが債権などの形に転化していれば、それに対して抵当権が及ぶ。372条で先取特権に関する304条が準用されるが、まだ問題がある。本件の場合、賃料債権に物上代位することができるかと問題になる。
通説:賃料は304条の文言通り、物上代位の対象である。
否定説:賃料は304条の文言通り、物上代位の対象である。しかし、抵当権は設定者に目的物の使用・収益を認めるものである。そこで、果実に抵当権の効力が及ばないことを定める改正前371条の解釈論として、法廷果実である賃料には抵当権の効力を及ばず、賃料は原則として物上代位の対象にはな...