日本と世界遺産ブーム
日本は今、世界遺産ブームである。このレポートでは、旅する前の「世界遺産」を参考に、このような世界遺産ブームが起こっているのは日本だけなのか、また日本の世界遺産ブームはなぜ起こっているのかについて述べる。
まず、日本で世界遺産ブームが起こっているという象徴が2005年はじめに設立された世界遺産アカデミーが主催する世界遺産学検定である。商業主義の色彩が強いが、このような検定を行っても、一定受験者が見込めるほど日本は世界遺産がブームなのである。
このような世界遺産ブームが起こっているのは日本だけなのかということについて述べる前に、日本とアメリカ合衆国の世界遺産に対する関心の違いを述べ、日本がどれほど世界遺産に対して関心が高いか述べたいと思う。まず、大きな違いは世界遺産という言葉の知名度である。日本人にとっては信じがたいことだろうが、アメリカ人のほとんどが世界遺産という言葉すら知らないという状態なのである。アメリカの老舗書店、バーンズ・アンド・ノーブルの店員でさえ、世界遺産の本を「南北戦争」や「第二次世界大戦」の本と間違えるほどである。次に世界遺産地への行く道の標識の違いである。日本なら、世界遺産登録地などの看板のオンパレードなのだが、アメリカの世界遺産への道には、その場所が世界遺産に登録されていることを示す標識すらない。日本とアメリカの世界遺産に対する関心の違いは以下のような理由が考えられる。まず、アメリカは日本やヨーロッパと違い自国の国土が広く、海外旅行への関心も日本に比べると考えられないほど低いのである。もう1つは、アメリカ人の中では世界遺産より国立公園のほうが価値を高くみていることである。実際、私は高校時代にカナダに留学していたが、アメリカ人、カナダ人は私たち日本人よりはるかに自国に誇りを持っていて、世界で定められるよりその国で貴重と判断されるもののほうが重要なように思えた。
アメリカとの比較以外に世界各国の世界遺産に対する関心の度合いを測れる基準となるものがある。それは切手である。切手の発行は多くの国で郵政が民営化されているとはいえ、ほとんどの国で国家、あるいは国家に準ずる機関や組織によって一元的に管理されているのである。切手は、「国家のメディア」と言っても過言でないのである。
上記によって切手の発行からその国がどれだけ世界遺産を重要視しているか、また世界遺産に対する関心が伺えると理解できたと思う。何国かとりあげて説明していきたいと思う。日本のお隣、韓国は世界遺産の切手を毎年シリーズで出している国の一つである。韓国の切手はシートで発売されており、ユネスコの世界遺産のシンボルマークも入っている。韓国と同じようにユネスコの世界遺産のシンボルマークが入っている切手を発行しているアジアの国は、ベトナム、ラオス、スリランカなどだけである。世界遺産大国の中国は世界遺産と釘打ったシリーズ切手は発行していないものの、個別に中国にある世界遺産の切手を21世紀になって発売し始めた。次に切手発行に注目したのは世界遺産の宝庫であるヨーロッパである。日本の切手収集家の関心が強いヨーロッパでは、世界遺産の切手を定期的に発行している国が多くある。まず、フィンランドは複数の切手を組み合わせた小型シートという形で世界遺産の切手を発行している。スウェーデンは切手帳のスタイルでこれまでに6回世界遺産の切手を発行している。フランスは1987年から何年かおきに世界遺産の切手を発行しているが、ユネスコ本部のお膝元だけあって自国の世界遺産だけではなく世界中の世界遺
日本と世界遺産ブーム
日本は今、世界遺産ブームである。このレポートでは、旅する前の「世界遺産」を参考に、このような世界遺産ブームが起こっているのは日本だけなのか、また日本の世界遺産ブームはなぜ起こっているのかについて述べる。
まず、日本で世界遺産ブームが起こっているという象徴が2005年はじめに設立された世界遺産アカデミーが主催する世界遺産学検定である。商業主義の色彩が強いが、このような検定を行っても、一定受験者が見込めるほど日本は世界遺産がブームなのである。
このような世界遺産ブームが起こっているのは日本だけなのかということについて述べる前に、日本とアメリカ合衆国の世界遺産に対する関心の違いを述べ、日本がどれほど世界遺産に対して関心が高いか述べたいと思う。まず、大きな違いは世界遺産という言葉の知名度である。日本人にとっては信じがたいことだろうが、アメリカ人のほとんどが世界遺産という言葉すら知らないという状態なのである。アメリカの老舗書店、バーンズ・アンド・ノーブルの店員でさえ、世界遺産の本を「南北戦争」や「第二次世界大戦」の本と間違えるほどである。次に世界遺産地への行く道の標識の...