保全命令手続きが通常訴訟手続きと異なる点について説明しなさい。
債権者が勝訴判決を得て強制執行を行うまでには相当の時間を要してしまう。そこで,債権者の権利を保護す
るため,債務者の財産を一時的に処分できないようにしておく手続が保全訴訟や保全処分と呼ばれる民事保全で
ある。
法は民事保全について、仮差押え、係争物に関する仮処分、及び仮の地位を定める仮処分の総称である(民保
1 条)と定義しており、この民事保全の手続は、保全命令手続(民保第2 章)と保全執行手続(民保第3章)に分か
命令と仮処分命令および、保全命令に対する不服申立ての手続(保全異議、保全取消し、保全抗告)のことであ
る。
保全命令手続と通常訴訟手続との相違点
1.手続きの一体性
保全命令手続は、給付訴訟、形成訴訟、確認訴訟など判決手続といわれる通常の民事訴訟とは、別存在であ
る。しかし、民事訴訟法の第1 編総則は、原則的に保全命令手続に適用され、第1審の訴訟手続や上訴に関する
規定も、保全命令手続に準用される。
保全命令は申し立てによって裁判所が行う(民事保全法2条1項)が、保全執行は申し立てにより裁判所または
執行官が行う(同 2 項)
文言付き公正証書)の作成・公証を行う機関と執行機関とが分離していることに対応している。つまり給付訴訟と
強制執行とは連続性があるものの手続きとしては別建のものである。
一方で、保全命令は発令されると、すぐさま保全執行に移るという段取りになっており、保全命令手続と保全執
行手続とが一体化されている。
2. 保全命令の発令手続
2-1) 保全命令を発するには、被保全権利のほか、保全の必要性が存在しなければならない(民保20 条、23 条
1-3 項)。保全命令を裁判所が判断するにあたり、保全されるべき権利の有無の他に、仮差押えの必要性や仮処
裁判所は訴訟要件の存否を職権で調査しなければならない。つまり、弁論主義ではなく職権探知主義が原則とな
る点で相違している。
2-2) 被保全権利と保全の必要性の存在については、証明ではなく疏明が要求される(民保13 条 2 項)。
認定は証拠を調べて行うが、その手続きは本案訴訟における証明の手続きと区別され疏明と呼ばれる手続きで
ある。疏明は即時に調べることのできる証拠方法しか使えず、裁判官の心証が確認にまで達しなくとも足りる点に
おいて証明と相違している。
2-3) 本案訴訟で債権者の権利が否定されれば保全命令の執行によって債務者の被った損害を賠償しなけれ
ばならいため、保全命令の発令に際しては、債権者に損害に対する担保を提供させることができる(民保 14 条 1
項)。
保全命令の申立てには緊急を要するため債権者に疎明に十分な証拠方法を準備する時間的余裕がない場合
でも、債権者に担保を提供させて保全命令を発令することが認められている。また、担保を供することで債権者に
よる保全命令の申立ての濫用防止を保護している。
2-4) 保全命令の申立ての審理について、口頭弁論を経る必要はない(民保3 条)。口頭弁論は法廷で行われ、原
則として公開される(憲82 条)が、保全命令の申立てにおいて口頭弁論を経ない場合には非公開審理となる点が
通常訴訟手続きと異なる点である。また、審理の構造は基本的に対審ではなく審尋であり、仮差押えまたは係争
物に関する仮処分においては、迅速性が要求されるため、審尋も行わず、申立書と添付された疎明資料のみの
書面審理によって保全命令を発令することが可能である。審尋を行
保全命令手続きが通常訴訟手続きと異なる点について説明しなさい。
債権者が勝訴判決を得て強制執行を行うまでには相当の時間を要してしまう。そこで,債権者の権利を保護す
るため,債務者の財産を一時的に処分できないようにしておく手続が保全訴訟や保全処分と呼ばれる民事保全で
ある。
法は民事保全について、仮差押え、係争物に関する仮処分、及び仮の地位を定める仮処分の総称である(民保
1 条)と定義しており、この民事保全の手続は、保全命令手続(民保第 2 章)と保全執行手続(民保第3章)に分か
れた手続き構造になっている。そして保全命令とは、民事保全法に規定された「民事保全の命令」を指し、仮差押
命令と仮処分命令および、保全命令に対する不服申立ての手続(保全異議、保全取消し、保全抗告)のことであ
る。
保全命令手続と通常訴訟手続との相違点
1.手続きの一体性
保全命令手続は、給付訴訟、形成訴訟、確認訴訟など判決手続といわれる通常の民事訴訟とは、別存在であ
る。しかし、民事訴訟法の第 1 編総則は、原則的に保全命令手続に適用され、第1審の訴訟手続や上訴に関する
規定も、保全命令手続に準用される。
保...