法と道徳の関係について論じなさい
1 序論
法と道徳はいずれも社会規範である点では共通している。それは、単に事実上の関係がある
だけでなく、より必然的な結びつきがある。しかし、法と道徳とは相互依存関係を有するがこの両
者はまったく同じものでもなく、明らかな相違点がある。法の理念は正義であり、道徳の理念は善
である。法の理念としての正義は社会秩序を理想とするのに対して、道徳の理念としての善は
人々の正しい人格の形成を理想とする。
そして、法と道徳との関係は時代によって変遷してきたことに注目すべきである。中世において
は、法と道徳とは渾然一体であったし、近代社会が発展し啓蒙思想と共に法と道徳の区別が明確
に意識されてきた。その契機としては人権思想にある。国家権力によって強制される法の限界を
明確化する必要があった。第 2 の理由としては近代社会が資本主義社会として生まれた点にある。
資本主義社会においては予測可能性ということが要求される。経済が経済固有の法則に従って
遂行されず、道徳や人情が介入することによって経済活動の予測可能性がかく乱されるならば、
大資本を投下する経済活動は発展しえな...