消極的賦課方式論とは積立方式に切り替えていこうとすると二重の負担が発生するために賦課方式でやるしかないというものである。これに対して、現役時代から老後までの超長期の経済社会変動は、大きく、かつ、予測不可能であり、年金問題、老後の生活保障の問題を考えていくときに、運用利回りを予測に入れないと計算できず、経済成長率を考慮した形で現役世代の生活水準にあった給付水準を設定しなければならない。このような経済社会変動を数10年先に及んで予測しなければならないというリスクを民間に任せてしまっているのが積立方式であり、しかもこのリスクはあらゆる経済学においても見通すことはきわめて困難であり、非常に大きなリスクを負っているといえる。そこで消極的賦課方式論に対して、積極的賦課方式論は、我々が安定した老後の生活のために、その生活を賦課方式で賄っていくシステムを世代間にわたって行っていくことだと考えるものである。
社会保障論レポート―医療・年金制度等の問題に関する考察
医療1
V・R・フュックス「医療経済学の将来」のなかで、フュックスが、若き医療経済学者にアドバイスしていることを400字程度で説明しなさい。
V・R・フュックスは、本書において医療経済学の果たすべき二つ役割―行動科学と医療政策・医療サービスの学問領域―について述べている。そしてその観点から、若き医療経済学者に以下の助言を呈している。第一に、既存の主流の経済学のみに頼ることなく自己の理論的・実証的研究成果をそこにフィードバックすることで、高い能力を維持することだ。第二に、経済学のみならず医療技術と制度について学ぶことだ。第三に、膨大な理論や技法から妥当性のあるものを選りだし、真に重要なものを身につけるというスマートな学び方をすることだ。第四に、同時期に政治スタッフと研究者の兼業を試みてはいけない、ということだ。これは、それぞれに必要とされる能力と美徳が並存できるものではないからである。第五に、研究者としての三つの美徳―誠実、勇気、忍耐―を磨くことである。これは、自己のデータや方法の限界を直視し、果敢に既存の理論を打ち砕く研究に取り組...