アメリカにおける医療制度の現状を説明するとともに、わが国の医療改革について述べよ
1、アメリカの医療保障制度
アメリカでは、わが国のような国民全体を対象とした公的医療制度はなく、医療保障は公的医療保険としてのメディケアと公的医療扶助制度としてのメディケイドという制度がある。
⑴ メディケア
メディケアは65歳以上の高齢者、障害者年金受給者、慢性腎臓疾患者を有する被保険労働者とその家族を対象とする医療保険で、パートA(病院保険)とパートB(補足的医療保険)、さらにパートC(民間運営のマネジドケアを取り入れている選択プラン)の三つから構成されている。
パートAは強制加入となっており、医師の診療報酬を含まない入院費用や退院後の医療費等を給付する。但し一部自己負担が課せられる。この財源は社会保障税である。パートBは任意加入とされているがパートA加入者のほぼ全員が加入している。これはパートAでは給付されない医師の診療報酬や在宅医療費用、外来診療費用等を給付する。但し、これも一部自己負担が課せられる。これについての財源は、加入者が負担する保険料と連邦の一般歳入である。パートCは、あらかじめ保険加入者と保険者と医療提供者との間で医療や介護サービスの提供とその費用の負担について取り決めておくプランで、パートBの保険料に加え、パートCの保険料を支払うことで、長期看護、外来医薬品等の保険給付も受けられるというものである。
この制度の目的は、アメリカの65歳以上の高齢者や身体障害者など、市場原理から排除されるおそれのある弱者保護であり、運営管理は連邦政府がおこなっている。1999年の調査では、メディケアの加入者は高齢者が約3390万人となっている。
⑵ メディケイド
メディケイドは、1965年にメディケアと同時に制度化された、低所得者を対象とする公的な医療扶助制度である。その運営は連邦政府のガイドラインのもとで州政府が行っており、制度の内容は各州によって異なる。
メディケア・メディケイドの制度創設の背景には、民間医療保険では高齢者の対応ができないという多くの国民の認識があった。高齢者に限定することは医師会にとっても、診療の自由の幅を犯されることを最小限に止めることができることから受け入れやすいものであった。連邦政府としても、既に高齢者年金が軌道にのっており、その運用を見通すことがある程度できていた。つまりメディケア・メディケイドはどの方面からも合意を取り付けやすい制度であったのである。
2、アメリカの民間医療保険
上記のように、アメリカには、国民誰にも適用される普遍的な公的医療保険が存在しないために、民間医療保険が発展している。しかし、民間医療保険が誕生したのは、1929年になってからであり、さほど長い歴史を有するものではない。 アメリカの民間医療保険には、民間非営利保険組織ブルークロスによる病院保障保険と、同じく民間非営利保険組織ブルーシールドによる医師の診療報酬保障保険、そしてこれらに加え、民間営利保険会社による医療保険がある。なお、ブルークロスとブルーシールドは現在、ほとんどが合併されており、その略称はブルーズとなっている。 ブルークロス、ブルーシールドは、営利保険会社とは異なる取扱を受けており、一定の資金の確保業務が免除され、さらに州及び連邦税も免除されている。また、メディケアにおける政府と医療機関及び被保険者との間での中間支払い期間としつ支払い事務を行なっている。 ブルークロス、ブルーシールドの場合は、年齢や病歴の相違を問わず、各被保険は同一の
アメリカにおける医療制度の現状を説明するとともに、わが国の医療改革について述べよ
1、アメリカの医療保障制度
アメリカでは、わが国のような国民全体を対象とした公的医療制度はなく、医療保障は公的医療保険としてのメディケアと公的医療扶助制度としてのメディケイドという制度がある。
⑴ メディケア
メディケアは65歳以上の高齢者、障害者年金受給者、慢性腎臓疾患者を有する被保険労働者とその家族を対象とする医療保険で、パートA(病院保険)とパートB(補足的医療保険)、さらにパートC(民間運営のマネジドケアを取り入れている選択プラン)の三つから構成されている。
パートAは強制加入となっており、医師の診療報酬を含まない入院費用や退院後の医療費等を給付する。但し一部自己負担が課せられる。この財源は社会保障税である。パートBは任意加入とされているがパートA加入者のほぼ全員が加入している。これはパートAでは給付されない医師の診療報酬や在宅医療費用、外来診療費用等を給付する。但し、これも一部自己負担が課せられる。これについての財源は、加入者が負担する保険料と連邦の一般歳入である。パートCは、あらかじめ保...