少子高齢化が顕著となった近年、児童の人口が減少しているにもかかわらず、児童虐待は急増している。児童相談所における虐待相談の対応件数の推移からみても、事の深刻さがはっきりとみてとれ、平成17年度の実績では34,472件となっており、これを最新の基準とすると、5年間で約2倍、また15年間で見ると実に30倍以上にも膨れあがっている。内容を見ても専門的な援助を必要とするケースが増え、特に子どもの生命が奪われるといった重大な事件も数多く発生しており、今や児童虐待は社会全体で解決すべき重要課題となっている。
児童相談所の対応件数が急増した要因としては、啓発活動等により、虐待問題に対する理解・関心が高まった結果、従来潜在化していたものが発見・通告されやすくなったことも大きな要因の1つではあるが、虐待そのものが実際に増加していることは見逃せない事実である。その背景には、家庭環境の変化、望まない妊娠、ひとり親家庭の増加、親自身の自覚の低下や精神的未熟、社会からの孤立、子ども自身の要因、親子関係、経済的問題、人間関係等多くの要素が複雑に絡んでいる。
児童虐待は、一般的に①身体的虐待②性的虐待③ネグレクト(保護の怠慢・拒否)④心理的虐待の4つの種別に分類される。そのうち、相談件数が最も多いのが、身体的虐待でそれに次ぐのが、ネグレクトとなっており、平成17年度においては、全相談件数のうち、
身体的虐待が42.7%、ネグレクトが37.5%となっている。これら虐待は、児童に恐怖や絶望を与え、情緒不安定な状態となり、将来に渡って消えない深い心の傷を負わすことにつながる。
近年、都市化や核家族化が進行する中、親が地域社会から孤立してきている傾向がみられる他、女性の社会進出が進む中にあっても、子育ては母親の仕事だという固定観念が強く残っており、労働時間の短縮や事業所内保育園の設置といった支援環境の整備が未だ十分でないという現状がある。その結果、子育てに不安や負担を強く感じる親が増加し、子どもがストレスの原因となり、そのはけ口となってしまうなど、新たな虐待増加の直接的また間接的な要因となっている。こういった中、親世代と同居していないために、子どもの心身の発達に応じた接し方や育児方法が見出せず、また相談できる相手もいないという状況に母親らが置かれ、子育てに悩む場面が多くなっている。
日本ではここ近年、児童虐待防止法及び児童福祉法の改正や「子ども・子育て応援プラン」の策定などを行い、虐待の発生予防、早期発見・早期対応から虐待を受けた児童の自立に至るまでの切れ目のない総合的な児童虐待防止対策の充実、強化に向けた取組を実施しているが、今後、児童虐待に対してより身近で重要な役割を持つ市町村では、相談体制の充実を図り、ニーズの発見および解決に向け各関係機関への橋渡しを適切に行える体制をつくりあげ、保護支援を行っていくとともに、市町村が中心となって地域の社会資源を有効活用することを図りながら地域のコミュニティーを再構築し、予防及び早期発見の視点に立った施策や環境づくりを推進していく必要がある。
また、先述した通り、女性の社会進出やひとり親家庭の増加が進んでいる現代において、未だその支援体制が十分でないことが、子育てに強い不安や負担を与え、親のストレスとなり、児童虐待のみならず、出産率の低下にもつながっていると言える。このことからも児童の育成や保育を社会全体の問題として取り組み、安心して働き、子育てを行えるような環境づくりを行っていく必要がある。
まず、その一貫として保育問題があげられる
少子高齢化が顕著となった近年、児童の人口が減少しているにもかかわらず、児童虐待は急増している。児童相談所における虐待相談の対応件数の推移からみても、事の深刻さがはっきりとみてとれ、平成17年度の実績では34,472件となっており、これを最新の基準とすると、5年間で約2倍、また15年間で見ると実に30倍以上にも膨れあがっている。内容を見ても専門的な援助を必要とするケースが増え、特に子どもの生命が奪われるといった重大な事件も数多く発生しており、今や児童虐待は社会全体で解決すべき重要課題となっている。
児童相談所の対応件数が急増した要因としては、啓発活動等により、虐待問題に対する理解・関心が高まった結果、従来潜在化していたものが発見・通告されやすくなったことも大きな要因の1つではあるが、虐待そのものが実際に増加していることは見逃せない事実である。その背景には、家庭環境の変化、望まない妊娠、ひとり親家庭の増加、親自身の自覚の低下や精神的未熟、社会からの孤立、子ども自身の要因、親子関係、経済的問題、人間関係等多くの要素が複雑に絡んでいる。
児童虐待は、一般的に①身体的虐待②性的虐待③ネグレクト...