前訴(債務不履行に基づく損害賠償請求訴訟)で勝訴し確定判決を得たX(前訴被告・本訴原告・控訴人・被上告人)が、前訴を提起したYに対して、前訴におけるYの訴え提起が不法行為に当たるとして損害賠償(弁護士費用相当損害金80万円・慰謝料120万円)を請求した。
一審は、Yには前訴において主張したことについて理由がないものであることにつき故意・過失がなかったとして、Xの本訴請求を棄却した。これに対してXが控訴した。
原審は、Yが前訴の起訴当時事実の確認措置を採っていれば、Xに対して損害賠償請求をすることが本来筋違いである事を知りえたのに、これを怠って前訴を提起したことは不法行為を構成するとして、慰謝料は認めなかったが、弁護士費用相当損害金部分(80万円)の請求を認めた。
Yは上告して、原判決は違法であると主張した。
訴訟上の権能の濫用(5)
「訴え提起と不法行為」
最高裁昭和63年1月26日第3小法廷判決
昭和60年(オ)第122号損害賠償請求事件
1.事件の概要
前訴(債務不履行に基づく損害賠償請求訴訟)で勝訴し確定判決を得たX(前訴被告・本訴原告・控訴人・被上告人)が、前訴を提起したYに対して、前訴におけるYの訴え提起が不法行為に当たるとして損害賠償(弁護士費用相当損害金80万円・慰謝料120万円)を請求した。
一審は、Yには前訴において主張したことについて理由がないものであることにつき故意・過失がなかったとして、Xの本訴請求を棄却した。これに対してXが控訴した。
原審は、Yが前訴の起訴当時事実の確認措置を採っていれば、Xに対して損害賠償請求をすることが本来筋違いである事を知りえたのに、これを怠って前訴を提起したことは不法行為を構成するとして、慰謝料は認めなかったが、弁護士費用相当損害金部分(80万円)の請求を認めた。
Yは上告して、原判決は違法であると主張した。
2.訴訟の争点と決定
争点:前訴におけるYの訴...