会社法
株式分割と併合
問題)上場企業Aは、株価が低迷しているため、以下の方法を考えた。その内容と効果
を説明しなさい(本当に効果があるのか)。
(1)株主が保有する株数を増やすために株式分割を行った。
(2)市中の株式数を減らして株価を上げるために、株式併合または株式償却を行い
たいがどちらが良いか。
1.株式分割
2.株式併合
3.株式消却
4.検討
1.株式分割
株式分割とは、1株を2株にあるいは10株を11株とするように、既存の株式を細分
化して従来よりも多くの株式にすることである。
通常は、取締役会の決議によって行われる(商法218条1項)。株式分割によって株主
の持株数が増加するだけで、株主の実質的地位に変更は生じないからである。ただし、分
割比率の株式分割を行おうとする場合(1株を10株に分割する場合など)、分割後の発行
済み株式総数が授権株式数(166条1項3号)を超過するため、事前に授権株式数を増
加する定款変更を要する場合が生じうる。このような手続の煩雑を避けるために、平成1
3年改正で、株式分割に際しては、取締役会決議により定款を変更し、分割比率に応じて
授権株式数を増加できることになった(218条)。
分割では、新たに払い込みがなされるわけではないので、会社資産にも資本額にも変化
はなく、単に発行済み株式総数が増加するだけであり、通常は分割比率に応じて株価は下
落する。株式分割は、高騰した株価(値嵩株)を引き下げて株式の流通性を高めるため、
あるいは、合併の準備工作として合併比率を調整するためなどに行われる。
実務では、株式分割の割り当て株主確定日と実際に分割された株式が売買されるまで、
事務処理等の関係で 2 ヶ月程度のタイム・ラグがあり、分割の割り当て株主確定日(権利
落ち)以降は分割後の株価で取引されるのに対し、株数が分割前の株数しかないために、
投機的な取引が行われ、一時的に株価が高騰する現象が見られる。しかし、こうした高騰
は、株数が増えると同時に下落傾向に転じるのが一般的であり、株価の上昇を意図する企
業はやはり、業績拡大、財務健全性の確保など企業価値の増大の努力が不可欠である。
2.株式併合
株式の併合とは、10株を併せて1株とするように、株式単位を大きくするものであり、
これによって、発行済株式総数は減少する。減資手続をとらない限り資本の額や会社資産
も変動しないから1株当たりの価値は大きくなる。
株式併合をするためには、株主総会の特別決議を要する(214条1項)。株式併合決議
の議案の要領は、総会の招集通知に記載しなければならない(214条2項)。また、株式
併合が少数派を端株主にして会社経営から追い出すなどの不当な目的に利用される場合も
ありうるため、取締役は総会において株式併合を必要とする理由を開示しなければならな
い(214条1項後段)。
株式併合手続のために、株主から株券を提出してもらい、その後併合された株数が記載
された新たな株券を発行するのが一般的である。しかし、その事務手続きの省略のために、
総会で提出手続不要とすることもできる。株券提出期間満了時に併合の効力が発生する。
平成13年改正前は、株式併合によって相当数の端株が生じることを考慮して、法律が
特に必要と認めた場合に限って株式併合を認めていた。しかし、市場動向などから会社が
出資単位を大きくしたいと考える場合に、法律がこれを否定する理由はない。そこで平成
13年改正は、出資単位の決定を会社に委ねる趣
会社法
株式分割と併合
問題)上場企業Aは、株価が低迷しているため、以下の方法を考えた。その内容と効果
を説明しなさい(本当に効果があるのか)。
(1)株主が保有する株数を増やすために株式分割を行った。
(2)市中の株式数を減らして株価を上げるために、株式併合または株式償却を行い
たいがどちらが良いか。
1.株式分割
2.株式併合
3.株式消却
4.検討
1.株式分割
株式分割とは、1株を2株にあるいは10株を11株とするように、既存の株式を細分
化して従来よりも多くの株式にすることである。
通常は、取締役会の決議によって行われる(商法218条1項)。株式分割によって株主
の持株数が増加するだけで、株主の実質的地位に変更は生じないからである。ただし、分
割比率の株式分割を行おうとする場合(1株を10株に分割する場合など)、分割後の発行
済み株式総数が授権株式数(166条1項3号)を超過するため、事前に授権株式数を増
加する定款変更を要する場合が生じうる。このような手続の煩雑を避けるために、平成1
3年改正で、株式分割に際しては、取締役会決議により定款を変更し、分割...