刑法総論 違法性の概念

閲覧数6,853
ダウンロード数5
履歴確認

    • ページ数 : 4ページ
    • 会員550円 | 非会員660円

    資料紹介

    刑法総論
    犯罪論-違法性
    違法性の概念
    問題)違法性の本質をめぐる行為無価値論と結果無価値論について、犯罪論のどのよう
    な場面で両説の違いが現れるかの例を3つ以上挙げて、両説を説明せよ。
    1.総論
    違法性の本質について、形式的違法性論は「法に反すること」という。しかしこれでは、
    何が「違法」であるのか明らかにならない。そこで、実質的違法性論は①社会的規範に反
    すること(規範違反説)、②法益の侵害または危害(法益侵害説)という2つの見解を述べて
    きた。法益侵害説、個別具体的な法益を侵害または危害を生じさせることを違法の本質と
    する。これに対し、規範違反説は違法性の本質を、道徳・秩序・国家社会的倫理など法以
    外の規範に違反することであるという。これにより、違法性の本質については、結果無価
    値論(法益侵害説)と行為無価値論(規範違反説)の争いを見ることになった。
    2.結果無価値論と行為無価値論
    結果無価値論とは、違法性の実質を「法益の侵害ないしその危険性を生じさせた結果」
    と理解する見解である。行為の結果に着目し、否定的評価(無価値)を加えたもので、結
    果の無価値性をその理論根拠とする。これに対し行為無価値論は、結果の無価値のみなら
    ず、「行為の種類や方法・意図・目的などを客観的・主観的な要素によって特徴付けられる行
    為の全体的ありようが社会倫理上相当であるか否かの点もあわせて考慮し、その相当性か
    らの逸脱」として違法性を理解する見解である。
    cf.いつも真面目なA君は刑法総論の全講義に出席した。他方、お調子者
    のB君は刑法総論の講義には一度も出席しなかった。試験の結果、A
    君・B君共に 50 点だった。このときの成績評価をどのように行うか?
    ・結果無価値論⇒2人とも 50 点だから「不可」
    ・行為無価値論⇒A君は講義全部出席したので・・・60 点「可」
    B君は抗議にも出ず、50 点だから・・・50 点「不可」
    しかし、わが国の行為無価値論は、行為無価値で一元的に理解するのではなく、結果無
    価値とともに行為無価値をも考慮するという「二元的行為無価値論」を採用している。こ
    れは、結果無価値論は法益侵害またはその危険という結果のみで違法とし、侵害・危害を
    生じさせた結果にいたる過程(行為過程)を全く考慮しないという点に問題があり、他方、
    行為無価値論はこうした結果無価値論の問題点を克服してはいるものの、法以外の道徳や
    秩序といったあいまいなものに反することが違法であるとする点で、実質的法益侵害がな
    いにも拘らず、違法であるとすることに問題があり、よって、両者を併せて二元的に行為
    無価値を把握する考え方であり、現在の通説となっている。
    3.両説の対立点
    結果無価値論と行為無価値論の対立の根拠は刑法の役割、機能についての基本的認識の
    差異に由来する。
    結果無価値論は、刑法の機能を「個人の生活利益の保護」に求め、したがって、法益侵
    害またはその危険を違法とたずさえるのに対し、行為無価値論は刑農の保護法益のほかに、
    現実に存在する「倫理・秩序」にも着目し、これを維持することも刑法の機能であると考
    える。したがって、法益侵害がなくとも、これらに反すれば違法となると考える。還元す
    れば、結果無価値論とは、「他人に迷惑をかけなければ、違法でない」という理解であり、
    行為無価値論は、「他人に迷惑を生じさせていなくても、倫理・秩序に反すれば違法」とす
    る。
    両説の対立点は、違法性の判断方法にも見られる。結果無価値論は、客観的に判断され
    るとす

    資料の原本内容 ( この資料を購入すると、テキストデータがみえます。 )

    刑法総論
    犯罪論-違法性
    違法性の概念
    問題)違法性の本質をめぐる行為無価値論と結果無価値論について、犯罪論のどのよう
    な場面で両説の違いが現れるかの例を3つ以上挙げて、両説を説明せよ。
    1.総論
    違法性の本質について、形式的違法性論は「法に反すること」という。しかしこれでは、
    何が「違法」であるのか明らかにならない。そこで、実質的違法性論は①社会的規範に反
    すること(規範違反説)、②法益の侵害または危害(法益侵害説)という2つの見解を述べて
    きた。法益侵害説、個別具体的な法益を侵害または危害を生じさせることを違法の本質と
    する。これに対し、規範違反説は違法性の本質を、道徳・秩序・国家社会的倫理など法以
    外の規範に違反することであるという。これにより、違法性の本質については、結果無価
    値論(法益侵害説)と行為無価値論(規範違反説)の争いを見ることになった。
    2.結果無価値論と行為無価値論
    結果無価値論とは、違法性の実質を「法益の侵害ないしその危険性を生じさせた結果」
    と理解する見解である。行為の結果に着目し、否定的評価(無価値)を加えたもので、結
    果の無価値性をその理論根...

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。