少年法 課題レポート
論題:少年甲と乙による強盗致死事件について、甲に対しては保護処分(少年院送致)がな
され、乙に対しては刑事裁判で執行猶予判決が下された。この場合、甲と乙に対す
る処分はいずれが重いと考えるか。また、なぜそう考えるのか。
1 甲に対する保護処分(少年院送致)と、乙に対する強盗致死罪の執行猶予判決とでは、
甲に対する処分が重いと考える。
2⑴ 少年に対する保護処分とは、家庭裁判所に送致された少年を更生させるために行わ
れる少年法上の処分のことをいう。
保護処分の本質は、行為者の自由を制約することで、社会及び行為者自身を保護す
る点にある。そして、少年に対する保護処分は、国親思想から生まれたものであるか
ら、両者のうち行為者保護の側面がより強調される。よって、少年に対する保護処分
の本質は、第一次的に少年(行為者)を保護し、第二次的に社会を保護する点にある。
また、法が、虞犯少年に対する保護処分の余地を認めていることからすれば(少年法
3 条 1 項 3 号、6 条・7 条、8 条、21 条、24 条 1 項)、少年に対する保護処分は少年(行
為者)の性格の危険性に着目し、その危険性を基礎としてなされるものであるというこ
とができる。
⑵ 他方、刑罰とは、犯罪に対する法律上の効 果として行為者に課せられる法益の剥奪
を内容とした行政上の処分のことをいう。
刑罰の本質は、犯罪に対する応報であると解される(道義的責任論)。
また、刑罰は犯罪の存在に着目し、責任を基礎として科せられるものであるという
ことができる。
3 このように、両者は異なる種類の処分であり、形式的に保護処分と刑罰のいずれが重
いかを決することはできない。結局、保護処分と刑罰の具体的な種類について、実質的
に利益・不利益を検討した上で、軽重を考える必要がある。
そこで、以下甲に対する保護処分(少年院送致)と乙に対する強盗致死罪の執行猶予判
決に対する利益・不利益を検討する。
4⑴ 保護処分(少年院送致)について
ア 確かに、少年院送致の保護処分は少年の社会復帰にとって利益である。
少年院では、在院者の特性及び教育上の必要性に応じた教育課程が編成されてお
り、入院してくる少年の個性や必要性に応じて、家庭裁判所の情報や意見等を参考
にしながら個別的処遇計画が作成され、それに応じたきめ細かい教育が実施される。
そして、少年院での生活によって、社会から落ちこぼれのレッテルを貼られていた
少年が、学力を向上させることができたり、正しい職業観を養って職業訓練を受け
て手に職を付けたり、欠けていた基本的なしつけを補充されて社会生活上のルール
を学んだりすることで、社会に出てからそれぞれの道で成功している者も多い。
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イ しかし、身体的自由の制約という観点からは不利益であるといえる。例えば、成
人であれば刑事罰の対象にはなりえない虞犯行為を行ったにすぎない場合でも、虞
犯性と要保護性のある少年は虞犯少年とされ、少年院に送致されうる(少年法 3 条 1
項 3 号、6 条・7 条、8 条、21 条、24 条 1 項)。また、成人であれば検察官の起訴猶
予処分(刑事訴訟法 248 条)で済まされてしまう程度の事件であっても、少年の場合
には全件送致主義の下で、全て家庭裁判所に送致される。さらに、保護処分には執
行猶予制度が無く、たとえ抗告中であっても保護処分の執行が開始される。
⑵ 執行猶予判決について
ア 執行猶予判決は、犯罪は成立するが、刑の執行を猶
少年法 課題レポート
論題:少年甲と乙による強盗致死事件について、甲に対しては保護処分(少年院送致)がなされ、乙に対しては刑事裁判で執行猶予判決が下された。この場合、甲と乙に対する処分はいずれが重いと考えるか。また、なぜそう考えるのか。
1 甲に対する保護処分(少年院送致)と、乙に対する強盗致死罪の執行猶予判決とでは、甲に対する処分が重いと考える。
2⑴ 少年に対する保護処分とは、家庭裁判所に送致された少年を更生させるために行われる少年法上の処分のことをいう。
保護処分の本質は、行為者の自由を制約することで、社会及び行為者自身を保護する点にある。そして、少年に対する保護処分は、国親思想から生まれたものであるから、両者のうち行為者保護の側面がより強調される。よって、少年に対する保護処分の本質は、第一次的に少年(行為者)を保護し、第二次的に社会を保護する点にある。
また、法が、虞犯少年に対する保護処分の余地を認めていることからすれば(少年法3 条 1 項 3 号、6 条・7 条、8 条、21 条、24 条 1 項)、少年に対する保護処分は少年(行為者)の性格の危険性に着目し、その...