波動とは何か
ちなみに「波動砲」を直訳すると「wave cannon」であり、 すっかり軽いイメージに落ちぶれてしまう。
もったいぶるのは好きではないので、今回のタイトルにいきなり結論を書いてしまおう。
物体の一部分を揺すってやると、それに繋がった別の部分もそのうちに揺れ始める。 このように一箇所の動きが他の部分へと伝わる現象を「波」あるいは「波動」と呼ぶ。
現在の高校物理では「波動」というのが一つの単元となっている。 それで波に関わる現象というのが、何かニュートン力学とは別の、独立した一分野であるかのように勘違いしている人も多いように思う。 しかし波動なんて基本法則から導かれる現象の一つに過ぎない。 その応用があまりに広いので基本の一つであるかのように叩き込まれるだけだ。
さらに、スピリチュアル系というか、精神世界を説く人々なんかが、イメージの赴くままに「波動」という言葉を使う。 「癒しの波動が出ています」とか「精神の波動が広がって行きます」とか「ここから良い波動を感じます」とかいう具合に使う。
それで私のところには、「波動の正体は一体何なのですか?」とか「何だと考えますか?」という大真面目な質問が頻繁に舞い込むのである。 この辺りの、定義もろくにしない無責任な言葉の用法は物理とは全く関係が無い。 別に、イメージで語られた詩的表現が悪いと言うつもりはないのだ。 心で語られたものは心で受け止めるべきである。 物理学というのは、客観的に実証可能であることを重視することで人間的な誤りを防いでいる。 そうすることで他の方法より確実に真理に近付くことができるのではないかと信じて実践しているのである。
波動なんてものはそこら中で物体が動いて、その動きが周りの物体へと伝わって行くというごくありふれた現象なのであり、こういう現象が起きる理由はニュートン力学を使って計算で導いてやる事ができるのである。
しかし波という現象は物体だけとは限らない。 一例として、電場や磁場の大きさを一箇所で揺すってやるとその影響が周囲へと伝わって行く現象があり、それについてはマクスウェル方程式から、波動方程式を経て理解できるのだった。 これもまた波と呼ぶ。
そのような波という現象を解析力学を使って調べてやろうというのがこの第 4 部の目的である。 なぜそんな事をするのかというと、後で素粒子の理論を学ぶ時にどうしてもここで学ぶテクニックを土台として使わなくては進めないからである。 量子力学を学ぶと、この世は全て波だらけであることが分かってくることだろう。 それを踏まえた上に、素粒子論が来る。
しかし解析力学で波を考える以前の問題として、私はまだニュートン力学を使った波の説明をしていないのだった。 「波なんてニュートン力学の応用に過ぎないさ」と軽く考えていたせいである。 まずはそこから始めないといけない。 まぁ、すぐに説明できることなので、次回、一回だけで短く説明してしまおうと思う。
資料提供先→ http://homepage2.nifty.com/eman/analytic/whats_wave.html