物理法則の形式
変分原理のための前書き
物理学の法則は幾つかの形式に分類される。
一つは「微分形式」と呼ばれるものであり、ある瞬間の状態からスタートして微小な時間経過の後に状態がどのように変化するかを記述するやり方である。 あるいは、ある一点の状態から微小な距離だけ離れたところでは状態がどのように変化するか、というのを記述する場合もそうである。 ニュートンの運動方程式や、電磁気のマクスウェル方程式など、多くの法則がこの形式で書かれている。
微分形式で書かれた法則を使う場合、その積み重ねを適用することで全体を把握することになる。 微分方程式を解くことで質点の軌道を表す式を求めたりするわけだ。
この他に「積分形式」で法則を記述する方法がある。 これは部分にはこだわらずに、全体として見た場合にどんなことが成り立っているかを書き下すやり方である。 エネルギー保存則や、電磁気学に出てくる積分形のガウスの法則などがこれに当たる。
ところが、これらとは全く違う記述方法がある。 この方法では、初めに初状態と終状態を指定しておく。 すると、その途中でどのような経過を取りつつ終状態へ達するのかという道筋は無数に考えられそうなのだが、その中で実際に実現可能なもの、すなわち現実に自然が選ぶのはどういう条件を満たす経路だろうか、ということを考えるのである。 明らかに前の2つとは考え方が異なっている。
その時使う方法が「変分原理」と呼ばれるものである。 あるいは「最小作用の原理」と呼ばれることもある。 なぜそう呼ばれるのかはすぐに分かるようになる。
ここでは、そのような考え方が生まれた発端から出発して、より一般的な応用について解説していくことにする。 前にも言ったが、解析力学の元になったラグランジアンというのはこの原理から導かれたものである。
そう、我々は真の理解を得るために、これから原点に還ろうというわけだ。
資料提供先→ http://homepage2.nifty.com/eman/analytic/types.html