1-1マクスウェル方程式の概観

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    マクスウェル方程式の概観
    君はこれでマクスウェル方程式の殆んどを理解したも同然だ! ・・・言い過ぎかな?
    弁解
     前に書いた方針の中で私は、マクスウェルの方程式から議論を出発するのではなく、基本的な事柄の解説から始めて、最終的にマクスウェルの方程式にたどり着く方式で議論をしようと話した。 しかしなにも、電磁気学を作り上げた先輩科学者と同じ苦しみを味わいながら手探りで進む必要はない。 電磁気学は既に完成しており、その集大成がマクスウェルの方程式である。 すでにどこにたどり着きたいかが分かっているので、先輩たちの残してくれた地図を見ながら進めばいいのである。 私がこれからどの順序でマクスウェルの方程式にたどり着こうとしているのかをあらかじめ知っておくのは初学者にとって大変有利であると思う。
     我々には最先端を切り開くための時間がもっと必要であり、人材をもっと早く、もっと大量に最前線に送り込む必要があるのである。
    マクスウェルの方程式
     我々のとりあえずの目標であるマクスウェルの方程式は次の通りである。
     これが導かれるまでには大変な苦労があったので感謝しよう。 この式の中で、E は電場であり、他はそれぞれ、D が電束密度、H が磁場、B が磁束密度と呼ばれる。
    E: 電場   H: 磁場   D: 電束密度   B: 磁束密度
     それぞれの意味はこの後の解説で述べるが、ここで少し問題がある。 それは、言葉だけ聞くと E に対応するのが H であって、 D に対応するのが B であるように思われることである。 しかし、現代では E と B が対応していると考えるのが主流である。 これは電磁気学の「あまり深刻ではない」未解決問題であって、磁石の N だけ、あるいは S だけを持った粒子「磁気モノポール」の存在があるのかないのか分からないことが原因である。  もしモノポールが存在すれば、E と H が対応していると考えるのがすっきりする。(上のマクスウェルの方程式で0になっている二つの部分にそれぞれ、磁流密度、磁荷密度が入るので大変美しい対称型の方程式になるから。) しかし、モノポールがなければ、別にこの対応に強い根拠はなくて、 E と B を対応させた方が相対論の議論に便利である。(相対論ではマクスウェルの方程式をもっと簡単にまとめて表現できるから) それで「 E - B 対応」が主流になっているのである。  私はモノポールはないんじゃないか(その方が楽だ)と思っているので今後は E と B を対応させて議論したい。 それで時々、B のことを磁場と呼ぶこともあるかも知れないがあまり気にしないでもらいたい。 歴史的背景から言えば B は「磁束密度」と呼ぶのが正しいが、現在ではあまり気にせずに B を「磁場」と呼んでしまうことが多い。
     では、式の解説に戻ろう。 この式で rotE という表示や div D という表示がある。 初めての人にはまずこの意味が謎であって、すごく複雑な数学操作であるような印象を与えてしまう。 しかし、これは単なる略記号である。 rot E はベクトルであって、3つの成分を持つ。 ベクトル E の成分を( Ex, Ey, Ez ) と表すとすると、この略記号の各成分は、
    のように計算する決まりである。 この数学操作がベクトルの回転を意味するので 回転(ローテーション)と呼ばれている。 電場ベクトルが作る渦の回転軸の方向を表すベクトルに変換してくれる演算である。 なぜこの数学操作が回転を表すのか、というイメージをつかむのは

    資料の原本内容

    マクスウェル方程式の概観
    君はこれでマクスウェル方程式の殆んどを理解したも同然だ! ・・・言い過ぎかな?
    弁解
     前に書いた方針の中で私は、マクスウェルの方程式から議論を出発するのではなく、基本的な事柄の解説から始めて、最終的にマクスウェルの方程式にたどり着く方式で議論をしようと話した。 しかしなにも、電磁気学を作り上げた先輩科学者と同じ苦しみを味わいながら手探りで進む必要はない。 電磁気学は既に完成しており、その集大成がマクスウェルの方程式である。 すでにどこにたどり着きたいかが分かっているので、先輩たちの残してくれた地図を見ながら進めばいいのである。 私がこれからどの順序でマクスウェルの方程式にたどり着こうとしているのかをあらかじめ知っておくのは初学者にとって大変有利であると思う。
     我々には最先端を切り開くための時間がもっと必要であり、人材をもっと早く、もっと大量に最前線に送り込む必要があるのである。
    マクスウェルの方程式
     我々のとりあえずの目標であるマクスウェルの方程式は次の通りである。
     これが導かれるまでには大変な苦労があったので感謝しよう。 この式の中で、E は電場であり、他はそれぞれ、D が電束密度、H が磁場、B が磁束密度と呼ばれる。
    E: 電場   H: 磁場   D: 電束密度   B: 磁束密度
     それぞれの意味はこの後の解説で述べるが、ここで少し問題がある。 それは、言葉だけ聞くと E に対応するのが H であって、 D に対応するのが B であるように思われることである。 しかし、現代では E と B が対応していると考えるのが主流である。 これは電磁気学の「あまり深刻ではない」未解決問題であって、磁石の N だけ、あるいは S だけを持った粒子「磁気モノポール」の存在があるのかないのか分からないことが原因である。  もしモノポールが存在すれば、E と H が対応していると考えるのがすっきりする。(上のマクスウェルの方程式で0になっている二つの部分にそれぞれ、磁流密度、磁荷密度が入るので大変美しい対称型の方程式になるから。) しかし、モノポールがなければ、別にこの対応に強い根拠はなくて、 E と B を対応させた方が相対論の議論に便利である。(相対論ではマクスウェルの方程式をもっと簡単にまとめて表現できるから) それで「 E - B 対応」が主流になっているのである。  私はモノポールはないんじゃないか(その方が楽だ)と思っているので今後は E と B を対応させて議論したい。 それで時々、B のことを磁場と呼ぶこともあるかも知れないがあまり気にしないでもらいたい。 歴史的背景から言えば B は「磁束密度」と呼ぶのが正しいが、現在ではあまり気にせずに B を「磁場」と呼んでしまうことが多い。
     では、式の解説に戻ろう。 この式で rotE という表示や div D という表示がある。 初めての人にはまずこの意味が謎であって、すごく複雑な数学操作であるような印象を与えてしまう。 しかし、これは単なる略記号である。 rot E はベクトルであって、3つの成分を持つ。 ベクトル E の成分を( Ex, Ey, Ez ) と表すとすると、この略記号の各成分は、
    のように計算する決まりである。 この数学操作がベクトルの回転を意味するので 回転(ローテーション)と呼ばれている。 電場ベクトルが作る渦の回転軸の方向を表すベクトルに変換してくれる演算である。 なぜこの数学操作が回転を表すのか、というイメージをつかむのは大切であるが、後で説明しよう。 今すぐ知りたい人は 別のページ へ。 とにかく、rot の意味が分かれば最初の式の意味は分かるようになる。 磁束密度が変化すれば、変化した方向を回転軸とするような電場の渦が出来るというわけだ。
     そして、次の式の意味も似たようなものである。 電束密度が変化すれば磁場の渦が出来る。 しかし、この式の右辺には電流 i (これもベクトル)が入っている。 つまり、磁場は電束密度が変化したときだけでなく、電流が流れた時にもその電流のまわりに渦を作るということである。 高校で「アンペールの右ねじの法則」というのを学ぶと思うが、これが電流が流れた時に右回りに発生する磁場を表している。
     3番目の式には今度は div D という表示が出てくるが、これも略記号であって D というベクトルを( Dx, Dy, Dz ) と表すとすると、この略記号の定義は、
    である。 この数学操作は発散(ダイバージェンス)と呼ばれ、ベクトルが、ある微小領域からどれだけ発生するかを表している。 つまりこの式は「電束密度は電荷のあるところが発生源になっています」という意味である。 これについても後で説明するが、今すぐ知りたい人は 別ページ へ。
     そして4番目の式は右辺が0であるので、磁場の発生源はありません、という意味である。 磁場の発生源がなければ一体どこから発生するのか?と言えば、その発生源をたどっていくとぐるーっと輪になっていて、その渦の中には先ほど説明したように電流があるか、あるいは、電束密度が変化しているかしている、というわけである。
     以上がマクスウェルの方程式の簡単な解説である。
     最後に注意しておきたいのは、マクスウェルの方程式のうちの、上の2つの式はベクトル式であって、それぞれ、x y z の3つの成分についての3つの式を一つの形式でまとめたものである。 念のために初心者のために書き下しておくと、一番上の式は、
    を意味している。 どうせついでなので次の式も展開しておこう。
     このようなわけでマクスウェルの方程式は全部で4つに見えるが、実は全部で8つの式の集まりなのである。
    議論の手順
     さて次に、これからどうやってマクスウェルの方程式を導いていくかの手順を紹介しておこう。
    まず、電荷と、電荷が作る場である「静電場」を解説する。
    次に電流についてである。 電流と言うのは電荷の流れであり、電流の周りには磁場が発生する。 ここで
    の関係式「アンペールの法則」(2番目の式の一部)が導かれる。
    これが終われば、その逆である。 電流で磁場が発生するなら、磁場で電流を発生させる「電磁誘導」の話題である。 ここで
    の関係「ファラデーの電磁誘導の法則」(1番目の式)が導かれる。
    そして、ついにこれらをまとめてマクスウェルの方程式を作る過程である。 電束密度 D はこの時に矛盾点の解決と式の対称性を考えて、入れた方がいいのではないかということで導入されたものである。
     マクスウェルの方程式が導かれると、そこから電磁波について論じることが出来るようになる。 ここで電磁場の持つ運動量についての議論が出来るのである。
     いずれにせよ、教科書のように数式にこだわった議論をするつもりはないが、ある意味、教科書よりこだわった解説をしてゆくことになると思うので楽しみにしていて頂きたい。 私もこれからどういうことになるのか、まだ予想がつかないでいるのである。
    資料提供先→  http://homepage2.nifty.com/eman/electromag/maxwell.html

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