子どもの「個人差」について述べなさい。

閲覧数6,982
ダウンロード数14
履歴確認

    • ページ数 : 9ページ
    • 会員550円 | 非会員660円

    資料紹介

     子どもの「個人差」について述べなさい。
     (1)遺伝と環境について
    子育てに関する教えとして、「三つ子の魂百まで」といわれる。これを受けて『三歳までが勝負』などという書名の本があるほどである。また、「氏か育ちか」というような表現で、昔から一般の人々の生活の中でも、しばしば問われてきている問題がある。心理学的には、家系・家柄を表す「氏」というのは遺伝のことであるし、「育ち」という環境のことであると考えることができる。人間の発達を規定する条件として、この遺伝と環境との問題は、心理学において活発に論議されてきたテーマである。
     この論議について、エンドラー(N.S.Endler)は、およそ3つの立場に分けることができるとしている。
     第1は、「遺伝か環境か」のいずれか一方を二者択一的に主張する立場である。遺伝説(生得説)を主張したのは、カリカック家の家系調査を行なったゴッダード(H.H,Goddard)らであり、一方、環境説(後天的獲得説)を主張したのは、「遺伝なき心理学」を説いたクオ(Z.Y.Kuo)らである。
     しかし、このようにいずれか一方のみを強調する立場は、実証的な問題解決の結論を出しえていない。
     そこで第2は、「遺伝も環境も」として両者を平等に認め、発達特性は、遺伝と環境の両要因の加算的寄与の結果であるとする立場をとる。
     シュテルン(W.Stern)や、ルクセンブルガー(H.Luxenburger)の両極説などがこの立場である。
     この考え方は、常識的で理解しやすく、多くの人々に支持されてきた。しかし、遺伝と環境とが独立のものであり、単にその効果を加算的に持ち寄るにすぎないといった考え方はなお問題を残している。
     第3の立場は、遺伝と環境の両要因は、発達において独立的・単純加算的に寄与するのではなく、不可分のものとして相互作用的に寄与するという考え方で、相互作用説といわれる。
     遺伝と環境の相互作用的な寄与の例として、フェニルケトン尿症(PKU)があげられる。PKUは、特定遺伝子情報の異常によって、フェニルアラニンという物質を分解する酵素が欠如し、このため体内にフェニルアラニンが過剰に蓄積し、その結果として中枢神経系障害-精神発達遅滞が起こるというものである。PKUはかつては、遺伝性の不治の病とされてきたが、出生直後の検査で異常が発見された場合は、フェニルアラニンの少ない食事をすることによって精神発達遅滞などの障害をかなり抑制できるようになった。すなわち、環境の改善が、PKUという遺伝病を防ぐのである。このような場合には、遺伝と環境が互いに影響を及ぼし合うという意味で、相互作用があるといえる。
     また、ヘッブ(D.O.Hebb)は、発達の規定因を、発生的段階から6つに分類・整理している。これらのうち発生的段階での「生理学的特質」のみが純粋な遺伝的効果であり、ほかの5つはすべて外部からの影響を受ける環境的効果である。外部からの操作・調整が可能であるという見解に立てばすべてが環境要因となる。出生前の胎内で、すでに遺伝要因と環境要因とが複雑に作用し、出生後の発達には相互作用的効果となって現れる。したがって、発達のある時点で遺伝と環境の効果を分けることは困難であるとしている。
     ジェンセン(A.R,Jensen)の環境閾値説も相互作用説のひとつとしてあげることができる。遺伝は発達の可能性の範囲を規定するが、それが顕在化するには環境条件の質や量が大きな役割を界たし、「環境は発達の閾値的要因となる」と主張している。
     (2)愛着と発達について

    タグ

    環境子ども心理問題家庭人間障害影響役割精神

    代表キーワード

    個人差心理学

    資料の原本内容 ( この資料を購入すると、テキストデータがみえます。 )

     子どもの「個人差」について述べなさい。
     (1)遺伝と環境について
    子育てに関する教えとして、「三つ子の魂百まで」といわれる。これを受けて『三歳までが勝負』などという書名の本があるほどである。また、「氏か育ちか」というような表現で、昔から一般の人々の生活の中でも、しばしば問われてきている問題がある。心理学的には、家系・家柄を表す「氏」というのは遺伝のことであるし、「育ち」という環境のことであると考えることができる。人間の発達を規定する条件として、この遺伝と環境との問題は、心理学において活発に論議されてきたテーマである。
     この論議について、エンドラー(N.S.Endler)は、およそ3つの立場に分けることができるとしている。
     第1は、「遺伝か環境か」のいずれか一方を二者択一的に主張する立場である。遺伝説(生得説)を主張したのは、カリカック家の家系調査を行なったゴッダード(H.H,Goddard)らであり、一方、環境説(後天的獲得説)を主張したのは、「遺伝なき心理学」を説いたクオ(Z.Y.Kuo)らである。
     しかし、このようにいずれか一方のみを強調する立場は、実証的な問題解決の結論...

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。