2019~2022年度版の合格レポートです。
参考にどうぞ。
1.序文
風土記とは、奈良時代において地方から朝廷に向けて提出された地誌的な報告書のことである。本稿では、現存する風土記の特色を概略的に確認しつつ、風土記の成立事情と編纂意義について検討する。
2.現存する風土記の概要
現代には、出雲・常陸・播磨・豊後・肥前の五つの風土記が文献として残されている。ここではそれらの風土記の特徴や内容について大まかに触れる。
2.1出雲国風土記
出雲国とは現在の島根県東部にあたる地域で、五つの風土記のうち、唯一完全な形で残されているものである。その構成は、序文ともいえる総記に始まり、各郡の記述を経て巻末記で締めくくられている。また、国土の大きさや郷、寺社などの位置関係の記述に方位と数値が多く用いられており、この記述方式について、国文学者の荻原千鶴は「そうした数理性が、出雲国風土記の記述全体に、現実的な信憑性を与える役割をはたしている」 と述べている。
2.2常陸国風土記
常陸国は現在の茨城県の大部分と福島県の一部に相当する地域である。この風土記は古老相伝の旧聞異事、すなわち地域に伝わる伝承がその内容のほとんどを占めている。
2.3播磨国風土記
播...