1.日本の社会保障財政の概要と特徴
第2次世界大戦後に社会的混乱、失業、貧困等の解決のため、現在に連なる社会保障制度が設計された。戦後の日本では、右肩上がりの経済成長と低失業率、終身雇用を前提とした正規雇用、地域の公共事業等による雇用維持政策などにより、安定した生活基盤が確保できた。男性世帯主が主に収入を得、女性は現在よりも専業主婦の割合が高く、家庭内で子育てや介護を担った。このような背景のもと、1960年代に国民皆保険・皆年金を中心として、雇用保険、社会福祉、生活保護、介護保険などの制度と合わせて社会保障制度が構築された。このような日本の社会保障には以下の特徴がみられる。①国民皆保険・皆年金制度、②企業による雇用保障、③子育て・介護の家族依存、④小規模で高齢世代向け中心の社会保障支出、の4つである。
財政は①を中心とした社会保障を反映して、公的年金や医療保険など、社会保険の占める割合が高い。また、年金支給額の内訳は老後の生活保障である老齢年金が、医療保険では高齢者の医療給付が多くを占める。従って、社会保障支出は高齢世代に向けた給付の比重が高くなる。
反面、現役世代に向けた支出は...