1.近代国家財政
近代国家の始まりは国・地域により違いがあるが、西欧においては市民革命を経て18~19世紀に形成された主権国家をさす。日本では明治維新を経て近代国家が形成されたが、アジア・アフリカには20世紀後半に列強の支配から独立し近代国家建設が始まった国も多い。これら近代国家財政の特徴は、以下のとおりである。第1に身分制を廃し、政治的・経済的自由を基盤とする。第2に、土地や生産手段は市民の財産であり、国は財産を持たない無産国家である。このため国家運営費は基本的に租税により賄われる。第3に、国民主権により、国家の活動は、国民を代表する議会の承認による法律の制定を通じて決定される。ただし、近代では議会制度を通じて政府の決定に関与できたのは一部の高額納税者等に限定されていた。
身分制が廃されたことで農民は移動の自由を獲得し、工場で雇うことが可能となり、産業革命や資本主義が発展した。この背景には自然科学の進歩が迷信を退け理性を重視するようになったこと、このような理性重視の態度が政治にも現れ、人は平等であると説く啓蒙思想が登場したことが挙げられる。
19世紀イギリスでは、先進工業国である優位...