1.フロイトの精神分析
内科医であったフロイトは、催眠の研究から無意識という概念を確立し、人の心は通常人が自覚している「意識」、普段は意識しなくとも思い出す努力によって気付くことができる「前意識」、努力しても意識することもコントロールもできない領域である「無意識」の3層から成ると考えた。そして、フロイトの精神分析学を元にした精神分析療法では、心の病気や問題行動の原因を、無意識へと抑圧した心的外傷(トラウマ)であるとし、意識にのぼらない不快な記憶を再び意識下において理解することによって解消させることを目的とする。フロイトはまた、リビドーと呼ばれる性的欲求が神経症の症状形成に重要な役割を果たすと考え、人の精神構造は、性欲を含む本能的で快感を求める原則に支配され、無意識の中にあるとされる「イド(エス)」、自身について意識でき、知っている部分である「自我(エゴ)」、幼少期の躾など自分自身に組み込まれている考え方や振る舞い方であり、良心や道徳心を形成しているものであり、無意識の中にあるとされる「超自我(スーパーエゴ)」3つから成るとした。自我は無意識中のイドと超自我を取り持つ役割があり、イドと超...