日本大学通信教育部
2019~2022年度 リポート課題集
教科書の第Ⅱ部を精読し,そこで論じられている現代社会の倫理的課題の中から一つを選んで,どのようなことが問題になっているのかを解説し,さらに問題解決へ向けてのあなた自身の考えを論述しなさい。
本レポートは、教科書第Ⅱ部課題第 3 章「生命の始まりと終わり」から、現
在問題視される人工授精と安楽死について、一体どうであるべきかを考察したも
のである。即ちこれは、人間は人間の生命を操作することはどこまで許されるか、
という問題である。
人工授精問題
人工授精とは、人為的に男女の生殖細胞を接触させ、その間で受精を行わせる
ことである。人工授精の問題点として、精子提供や卵子提供が過度に商業化する
ことへの懸念や、治療費が高額なのに成功率が必ずしも高くないが故の患者に対
する搾取、優生思想の生じる余地への懸念などがあるが、ひとまず倫理学的には、
人工授精という行為それ自体が人間が行うものとして許されるかどうかが問題で
あろう。
キリスト教では公式な見解として、人工授精や体外受精が禁止されているが、
イエズス会修道士アンセルモ・マタイス氏は 2011 年に NCC宗教研究所で行わ
れたインタビューで、「教会はまだ自然法的、あるいは原則論にこだわる。しか
し、新約聖書の時代には人工授精は誰も考えられなかった。第一イエズスは人工
授精について何も語っていないのに、教会は語りすぎている...