日本大学通信教育部
2019~2022年度 リポート課題集
教科書の第Ⅰ部を精読し,そこで論じられている倫理学理論の中からあなたがもっとも納得できるものを一つ選んで,その要点を解説し,あなたがその理論を選んだ理由を他の理論と比較しながら論述しなさい。
私が教科書第一部の倫理学理論の中からもっとも納得できるものは生の哲学で
ある。このレポートは、生の哲学、特にショーペンハウアーの理論と他の理論を
比較していくものである。
ショーペンハウアーの思想の要となるのが、意志である。
「世界は盲目的な意志である」という彼の言葉は、たとえば、細胞がつねに弱
い細胞を駆逐しながら生き延びようとする現象は、そこには存在への欲望がある
だけで目的や意味などはない。ショーペンハウアーは、人間の行動はこのように
意味などなく、ただ存在したいという意志が起こす衝動にすぎないと考えたので
ある。
意志という絶対的な存在が人間の本質なのだから、人は常に何かを求めようと
する。しかし、一つ手に入ってもまた別の何かが欲しくなる、というように、完
全に満足することはあり得ず、人生は常に不満足の状態である。このように不満
足と苦しみから逃れられない元凶の意志が、理性的で良いものであるはずがない。
ショーペンハウアーにとっての善とは意志が欲するもの、悪とは意志が欲しな
いもの、意志の欲求の実現を妨げるものを悪いものだとした。そうすると、最高
の善とは意志が決定的に...