『腎クリアランス』の本質的理解を伝授する講義資料→動画解説はこちら(`・ω・´)https://www.youtube.com/watch?v=ror3Nlh9e7s&t=539s
腎クリアランス
薬剤師国家試験 第105回172問
解説動画はこちら(`・ω・´)
https://www.youtube.com/watch?v=ror3Nlh9e7s
105回172問
ある薬物を患者に点滴静注により持続投与中である。
定常状態における血中薬物濃度は5.0μg/mLであり、定常状態到達時には一旦完全に排尿し、
5時間後に再度排尿した尿の総量は300mL、尿中薬物濃度は180μg/mLであった。
この患者における糸球体ろ過速度120mL/min、薬物の尿細管再吸収率を20%、
血中非結合型分率を0.2としたとき、この薬物の尿細管分泌クリアランスに最も近い値はどれか、一つ選べ。
1.10
2.20
3.150
4.600
5.2500
クリアランスの概念
この箱の掃除能力=クリアランス(クリアにする能力)
→どのような言葉(単位)で表現できる??
クリアランスの概念・・・前後の濃度で表現?
100が30になったので、70掃除できた
→この箱のクリアランスは70mg/mL・・・??
時間の概念が入っていないので、とても不正確な表現になってしまう
100mg/mL
30mg/mL
クリアランスの概念・・・時間の概念が必須!
どれくらいの時間(min)で、
何mgの薬物を掃除できたか?
単位は(●/min)という形が欲しい
濃度 mg/mL と ●/min をつなげる単位を考えるとしたら? ●は何がいい?
クリアランスの概念・・・時間の概念が必須!
どれくらいの時間(min)で、
何mgの薬物を掃除できたか?
単位は(●/min)という形が欲しい
濃度 mg/mL と ●/min をつなげる単位を考えるとしたら? ●は何がいい?
●=mLしかない、掛け算することで mg/minという単位が作れるから!!
クリアランスの概念・・・mL/minの意味するもの
mL/min とは、単位から考えると『1分間に掃除できる血液の量』のこと
→これを僕たちは『クリアランス』(=すなわち掃除能力)と呼んでいる
血中濃度 × クリアランス = 単位時間で掃除できる薬物量 がわかる
mg/mL mL/min mg/min
10mg/mL
CL=120 mL/min
1200mg/minの
薬物を掃除できる
×
クリアランスの概念・・・mL/minの意味するもの
mL/minは単純に『1分間に流れる血流の量』とも読める
→ クリアランスと血流量は単位が同じ・・・では何が違うの?
血流量とクリアランスの意味の違い(単位L/hrは同じ)
Qh=80L/hr
例えばQh=80L/hrで肝臓に血流が流れ込む
肝抽出率 Eh=0.2(20%)とすると、
肝クリアランスCL肝(L/hr)はどうなるか?
Eh=0.2
80L/hr × 0.2
16L/hr
血流量=全体
CL =部分
CLが血流量を超えることはあり得ない
CL肝=Qh×Eh
前提知識のまとめ
2.CL の単位は mL/min(体積/時間)である
1.CL(クリアランス)とは、臓器の掃除能力のことである
3.血中濃度 × CL = 単位時間で掃除できる薬物量 がわかる
4.CL と 血流量の単位はmL/min(体積/時間)で、同じである
5.血流量(全体)、CL(部分)の関係である
6.クリアランスが血流量を上回ることはあり得ない
(入ってきた血流以上に、掃除できるわけがない)
腎臓
腎臓はどのように血液を掃除しているか?
腎臓
③
②
①
腎クリアランスとは、以下の合計である
①糸球体ろ過クリアランス
②尿細管分泌クリアランス
③尿細管再吸収(逆クリアランス?)
CL腎=①+②-③
120
80
40
例えば、CL腎=120+80-40=160
腎臓
③
②
①
腎クリアランスの再吸収率での表し方
①糸球体ろ過クリアランス
②尿細管分泌クリアランス
③尿細管再吸収率
CL腎=(①+②)×(1-再吸収率)
例えば、CL腎=(120+80)×(1-0.2)=160
120
80
0.2
③
②
①
105回172問 解説
120mL/min
0.2
??mL/min
★情報はなるべく図に一括して書く!
→知りたいものは何かをはっきりさせる
血中薬物濃度 5.0μg/mL
尿中薬物濃度 180 μg/mL
尿の総量/時間 300mL/5hr
知りたいのは②尿細管分泌クリアランス
だから、②を含む式を頭に思い浮かべる
CL腎=(①+②)×(1-再吸収率)
CL腎=(120×0.2+②)×(1-0.2)
血中非結合形分率0.2
=(24+②)×0.8
CL腎がわかれば、②が求まる、と書いてある
血中薬物濃度 5.0μg/mL
CL腎を求めるもう一つのルート・・・腎臓の外部情報
尿中薬物濃度 180μg/mL
尿の総量/時間 300mL/5hr
腎臓を通る前(掃除前)=すなわち血中濃度
腎臓を通った後(掃除後)=おしっこ
がわかっているのだから、この情報からCL腎が作れるはず
CL腎=(①+②)×(1-再吸収率)
この式は腎の内部を細分化した式
血中濃度 × クリアランス = 単位時間で掃除できる薬物量
尿中薬物濃度 × 尿の総量 = 単位時間で実際に掃除した薬物量
ここはイコールでしょ!
180μg/mL × 300mL/5hr
5.0μg/mL × CL腎
P=血中薬物濃度 5.0μg/mL
CL腎を求めるもう一つのルート・・・腎臓の外部情報
U=尿中薬物濃度 180μg/mL
V=尿の総量/時間 300mL/5hr
掃除できる薬物量 = 実際に掃除した薬物量
P×CL腎 = U×V
CL腎 =
U×V
P
よく教科書に載っとる公式ができる(暗記不要)
大切なのは薬物量の一致という事実
P=血中薬物濃度
U=尿中薬物濃度
V=尿の総量/時間
必ず覚える!
P×CL腎
U×V
CL腎 =
U×V
P
CL腎=(①+②)×(1-再吸収率)より
③
②
①
120mL/min
0.2
??mL/min
P=5.0μg/mL
U=180 μg/mL
V=300mL/5hr
血中非結合形分率0.2
=(0.2×120mL/min+②)×(1-0.2 )
=(24mL/min+②)×0.8 …A
より
=
180μg/mL×300mL/5hr
5.0μg/mL
=
36 mL/min …B
A=B より
(24mL/min+ ② )×0.8 = 36 mL/min
② = 21mL/min (選択肢2が正解)
この問題で身に着けてほしいこと
1.クリアランスの単位とイメージ
2.血中濃度 × CL = 単位時間で掃除できる薬物量 という使い方
4.掃除できる薬物量 = 実際に処理した薬物量を使って、図から式を作る
3.CL腎=(①+②)×(1-再吸収率)を、図から作る