スタインベックの物語の描き方は、本当にすばらしい。人の心の動きはとても繊細で、微妙な部分が多い。ただ他人の動きによって変化するのではなく、その時の環境、過去の境遇この本の著者、ジョン・スタインベックは1902年、サンフランシスコの東南約80マイルの小都市サリーナスに生まれた。緑の温暖なこの平野で、スタインベックは自然への豊かな感受性をはぐくみながら育った。彼にカリフォルニアの大地を描かせたら天才だ。彼の描くカリフォルニアの大地は、土くさく、広大で、目の前に地近く照りつける太陽とその前に先が見えないくらい広がる平地とを、読む者にはっきりと思い浮かばせる。
『二十日鼠と人間』の舞台ソルダードはサリーナスから25マイル程上流に当たり、1930年代の不況にあえぐ西部の男達を描いている。このころ、オクラホマ、アーカンソー州などが異常な干ばつに見舞われ、砂あらしで農地を失った貧しい農民が、移動農業労働者として流浪の生活を余儀なくされていた。スタインベックも大学に通いながら、農場や商店で働き、この厳しい時代を生きた。
ジョージやレニーもそうして、転々と農場を放浪していたのである。知的障害で、子供のように純粋な大男レニーと頭のキレがよく、しっかり者のジョージ。ジョージとレニーの夢は「一軒の小さな家と農場を持ち、土地のくれる一番いいものを食い、ウサギを飼って暮らす」ことだった。この夢は、当時の移動農業労働者にとっての最高の夢だったし、途方もない夢だった。
レポート、海外文学、二十日鼠と人間、ジョン・スタインベック、英米文学
この本の著者、ジョン・スタインベックは1902年、サンフランシスコの東南約80マイルの小都市サリーナスに生まれた。緑の温暖なこの平野で、スタインベックは自然への豊かな感受性をはぐくみながら育った。彼にカリフォルニアの大地を描かせたら天才だ。彼の描くカリフォルニアの大地は、土くさく、広大で、目の前に地近く照りつける太陽とその前に先が見えないくらい広がる平地とを、読む者にはっきりと思い浮かばせる。
『二十日鼠と人間』の舞台ソルダードはサリーナスから25マイル程上流に当たり、1930年代の不況にあえぐ西部の男達を描いている。このころ、オクラホマ、アーカンソー州などが異常な干ばつに見舞われ、砂あらしで農地を失った貧しい農民が、移動農業労働者として流浪の生活を余儀なくされていた。スタインベックも大学に通いながら、農場や商店で働き、この厳しい時代を生きた。
ジョージやレニーもそうして、転々と農場を放浪していたのである。知的障害で、子供のように純粋な大男レニーと頭のキレがよく、しっかり者のジョージ。ジョージとレニーの夢は「一軒の小さな家と農場を持ち、土地のくれる一番いいものを食い、ウサギを飼って暮...