世界中には貧困に苦しむ人がたくさんいる。食べ物がない、住む場所がない、着る服がない、など状況は地域や人によって様々だが、生活に必要なものが欠如しているために、人間として最低限度の生活を送ることができずにいる人がいる。その一方で先進国では目に見えない貧困が問題になっている。地域や文化によって異なる貧困の状況を踏まえながら、貧困の定義を明らかにすることを本稿の目的とする。
貧困の定義とは何かを考える
世界中には貧困に苦しむ人がたくさんいる。食べ物がない、住む場所がない、着る服が
ない、など状況は地域や人によって様々だが、生活に必要なものが欠如しているために、
人間として最低限度の生活を送ることができずにいる人がいる。こうした物質的貧困を定
義する指標の一例として、貧困線以下で生活している人口比率や食糧不足人口率(図 1)など
がある。図 1 の食糧不足人口比率からは、世界的な食糧不足の人口比率は減少しているが、
アジアやラテンアメリカに比べると依然アフリカの食糧不足人口比率は高いことがわかる。
一方で、能力的な貧困を表す指標には識字率や乳幼児死亡率(図 2)などがある。図 2 は 5 歳
児以下の子ども 1000 人あたりの死亡率を示しており、最も死亡率の高いアンゴラでは 5 歳
児以下の子どもの 10 分の 1 以上が死亡していることがわかる。
しかしながら、こうした指標は客観的な分析に基づいているものであり、そこで暮らし
ている本人の主観的な分析が一切反映されていない。そこで、現地の人々の声を反映した
主観的な貧困の分析方法として参加型貧困分析と...