高校一年生で学ぶ「羅生門」(芥川龍之介)、高校二年生で学ぶ「山月記」(中島敦)、高校三年生学ぶ「舞姫」(森鴎外)を詳細に教材分析した上で、文学的文章教材を具体例として、高等学校三年間の国語学力形成の筋道を明らかにするとともに、高等学校の文学的文章教材の特質について説明しなさい。
まず、これから取り上げる「羅生門」「山月記」「舞姫」の三作品に共通するテーマについて述べる。これらの作品が主題として追及しているのは「人間の葛藤」である。自分自身に抱く誇りと、現実の自己との狭間で揺れ動く人間の心理を、三作品がそれぞれの視点から描いているのだ。
はじめに、「羅生門」から教材分析していく。「羅生門」の登場人物は、下人と老婆で、下人がこの物語の主人公である。まず、冒頭で、この物語が多数の視点から語られていることが読み取れる。語り手の視点、近代の語り手の視点、そして下人の視点である。このように、多数の視点から物語を描くことによって、物語に重層性を持たせているということを学ぶことができる。
下人が老婆と出会う場面に移行すると、下人の心情が揺れ動く。ここでの心情の変化を正確に読み取ることが重要な点にな...