【参考文献】
・山口義枝「乳幼児・児童の心理臨床」<放送大学教育振興会[NHK出版] 2011.03>
・玉川大学赤ちゃんラボ「なるほど!赤ちゃん学」<新潮社 2012.06>
・山口創「子供の「脳」は肌にある」<光文社新書 2004.04.16>
・平井信義「思いやりある子の育て方ー「まかせて」伸ばす教育のすすめ」<1993.06>
・内田伸子「よくわかる乳幼児心理学」<2008.01>
子を持つ多くの親はわが子に思いやりのある子に育って欲しいという願いがある。しかし、いくら口で言って聞かせても思いやる気持ちは育つものではないという難点がある。感じる気持ちの問題で、しつけの中でも最も難しいと考えられる。ゆっくり時間をかけて育まれていくもので、身体で覚えていく事が必要である。では、どのような働きかけに効果があるのか述べる。
思いやりとは相手の立場を思って、感情を察して行動に移す気持ちが自然に湧き上がってくるものであり、道徳観やマナーとしての行動とは異なるものである。決して言葉で言い聞かせて育つものではなく、感じる気持ちの問題である。
思いやる心はいくつかの要素で構成されている。相手の気持ちを理解、共有する能力の共感、相手の立場になり考える役割取得能力、他者のことを考え行動する向社会的行動など複数のものから成り立つのである。そのなかでも、思いやりを育てるうえで最も重要で基礎となるものは共感であり、相手の身体に自分の身体を重ね合わせることで起こる交感を前提に生まれるものである。
共感とは、相手が置かれた状況から生じる感情にともなって、自分にも相手と同じ、もしくは同等の...