「嗜好品~コーヒー~」
コーヒーはしばしば歴史を動かすきっかけとなった嗜好品の一種である。
では嗜好品とはなにか。
①「通常の食物」ではない。だから栄養・エネルギー源としては期待しない
②「通常の薬」ではない。当然、病気への効果は期待しない。
③生命維持に「積極的な効果」はない。
④しかし「ないと寂しい」という感じがする
⑤体内に摂取すると「精神(=心)に良い効果」がもたらされる
コーヒーなどの嗜好品は、人々の気分を落ち着け、静謐にして不思議な感覚にする。このことが、ビジネスも含めて、日常の人間関係を確かなものにする上で大きな役割を果たすらしい。
嗜好品がもたらされたとき、その功罪をめぐっては、大きな議論を呼ぶが、栄養にもならない嗜好品が人々の間に伝播していく速さは驚くべきものがある。
ではここで、コーヒーの伝播に注目してみる。
コーヒーが人類に発見されてから、今日、私達が身近に接している、思考飲料として用いられたものではなく、現在のコーヒーの姿になったのは、ずっと後のことである。
年代ははっきりしないが、エチオピアで発見された’’赤い実’’は、その後回教僧の間でたいへん薬効のあることがわかり大いに利用されてきた。こうして、しばらくは生のままたべられていた’’赤い実’’も運搬に日数のかかる遠隔地の回教圏からの要望に答えるため、保存加工がされ、天日による乾燥がされた。
天日によって乾燥された実は、腐敗は防止で着たが、実の果肉が薄いため食べるには一層不向きとなった。そこでこれを煎じ煮出した汁を飲んでも良いのではないかという事になったのである。
そしてコーヒーの飲料はすすみ、特に14世紀になって、オスマン・トルコ帝国の勢力が盛んになり、この方面でもコーヒーが大いに飲まれだした。
ヨーロッパでは14世紀ごろから、北イタリアの商業都市国家郡、ヴェニス・ジェノバ・フローレンス、ミラノ等の自由都市が栄えてきて、コーヒーに関する情報が次々に入ってくる。よって好奇心の強い一部のものが密かに入手して、これを飲用する事が流行し始めた。
そして16世紀初頭から、コーヒーの飲用はますます盛んになり、コーヒーハウスが出現した。17世紀ごろ、「治安妨害の温床」として各国でコーヒーハウスが禁止されたが、一般民衆の反対に絶えかねて、撤回された。このようにコーヒーは世界各国で愛されている。
では、ここで特徴的な世界の国々のコーヒーの特徴・飲み方・背景をとりあげてみる。
1.イタリア
イタリア、と聞くと多くの人がワインを思い浮かべるだろう。しかしイタリア人は決して酔うためにワインを飲んでいるのではない。酔っ払うことは美学的にも問題であり、そんな姿を見られることは不名誉である以上に本当にかっこ悪いこととされている。そんな酩酊を嫌うイタリア人が毎日何度でも飲む飲み物がコーヒーである。エスプレッソを一日に10杯以上も飲むという人は少なくない。日本人がストレス解消や疲労回復を名目にしばしばお酒を飲むところを、イタリア人はコーヒーの覚醒作用で代替えしているといえるかもしれない。
彼らは蒸気で浸出するエスプレッソを、「バール」と呼ばれる店で楽しむ。エスプレッソは、日本の喫茶店のように椅子に座ってゆっくり飲む類のコーヒーではなく、淹れたてのコーヒーを熱々のカップで飲む、のが本意である。デミタスカップに入れられたコーヒーの浸出液はせいぜい3~4口で飲み終わる。
だからイタリア人は、エスプレッソをカウンターで受け取ると、立ったまま砂糖をたっぷりと加えて即座に飲み
「嗜好品~コーヒー~」
コーヒーはしばしば歴史を動かすきっかけとなった嗜好品の一種である。
では嗜好品とはなにか。
①「通常の食物」ではない。だから栄養・エネルギー源としては期待しない
②「通常の薬」ではない。当然、病気への効果は期待しない。
③生命維持に「積極的な効果」はない。
④しかし「ないと寂しい」という感じがする
⑤体内に摂取すると「精神(=心)に良い効果」がもたらされる
コーヒーなどの嗜好品は、人々の気分を落ち着け、静謐にして不思議な感覚にする。このことが、ビジネスも含めて、日常の人間関係を確かなものにする上で大きな役割を果たすらしい。
嗜好品がもたらされたとき、その功罪をめぐっては、大きな議論を呼ぶが、栄養にもならない嗜好品が人々の間に伝播していく速さは驚くべきものがある。
ではここで、コーヒーの伝播に注目してみる。
コーヒーが人類に発見されてから、今日、私達が身近に接している、思考飲料として用いられたものではなく、現在のコーヒーの姿になったのは、ずっと後のことである。
年代ははっきりしないが、エチオピアで発見された’’赤い実’’は、その後回教僧の...