このレポートは事例に即して、共同正犯に関する論点を論じています。
※このレポートは以下のレポートに収録されているものと同じ内容です。
慶応義塾大学法学部(通信)合格レポート集
http://www.happycampus.co.jp/docs/938478183489@hc15/122970/
■刑法総論
(1)甲と乙の刑事責任
1.強盗致傷罪の成否
甲はまず凶器の提示という脅迫による強盗(刑法236条)を画策していたが、財物の強取に際して、結果的に被害者Aに全治一か月の重傷を負わせている。そこで甲には強盗罪の結果的加重犯としての強盗致傷罪(刑法240条)が成立するかが問題となる。
同罪を結果的加重犯として解するならば、強盗行為から傷害の結果が生じることを要求され、さらにそこには暴行の故意を要することになる。事例を確かめると、まず甲がAに対してハンターナイフ(凶器)を示す行為は暴行として捉えることが可能である(最判昭和28年2月19日刑集7巻2号280頁、最判昭和33年4月17日刑集12巻6号977頁)。しかしながらAの負った傷害は、凶器が示された行為から直接発生したものではなく、あくまでも抵抗の際に生じたものである。こういった因果関係でも結果的加重犯としての強盗致傷罪は成立するか。
思うに、同240条は「強盗の際には、意図せざる死傷の結果の発生をともないがちであることに着目して、被害者の生命・身体を特に厚く保護しようという趣旨の規定」である。すると、上記のごと...