肝炎
肝炎は黄疸という特徴的な臨床症状と結び付けられて、古くから注目されていた疾患である。肝炎は経過の長短などから、急性肝炎と慢性肝炎に大別される。一方、肝炎は成因の違いによって、ウイルス性・中毒性・アルコール性などにも分けられる。わが国にみられる肝炎の多くはウイルスが関与しているものと考えられているので、ここではウイルス肝炎について触れることにする。
1.急性肝炎
A型肝炎
A型肝炎は、A型肝炎ウイルスの経口感染によって引き起こされるもので、かつて流行性肝炎あるいは伝染性肝炎と呼ばれていたものに相当する。突発的にある地域で集団発生する。
潜伏期間は平均25日で、これはB型肝炎に比べると短い。症状は発熱、食欲不振、全身倦怠感などが主である。無黄疸性の場合もあるが、一般には黄疸が見られる。
A型肝炎ウイルスの感染は一過性であり、持続感染ではないので慢性肝炎に移行することはほとんどない。
B型肝炎
輸血や採血などの操作を受けた後に発症する肝炎は、血清肝炎あるいは輸血後肝炎として知られていた。その原因としてB型肝炎ウイルス(HB抗原)が同定されるにいたり、B型肝炎と呼ばれるようになった。B型...