第二回添削用ファイルです。よろしくお願いします。
第一章 選挙について
第一節 はじめに
この論文集では、様々な「選挙」問題を取り上げる中で、選挙のあり方や国民の民意といった問題に切り込んでいきます。
そもそも「選挙」は、民主政治の基本であり、日本国憲法の前文の「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、(中略)政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」を前提として、国民を主権者とし、直接または代表者を通じて国の政治に参加する権利が与えられています。選挙は主に国会の衆参両院選挙、一般の選挙(地方選挙や地方公共団体の長の選挙)、特別の選挙(国政/地方選挙の再選挙や補欠選挙)などがあります。
本章では、「選挙」についての基本的な知識を確認するとともに、日本における選挙問題(政治的無関心、投票率の低下)を取り上げ、新たに成立した“ネット選挙”や“18歳選挙権”についても考察していきます。
第二節 参政権・選挙権について
参政権は、主権者である国民が直接的または間接的に国政に参加する権利のことです。この参政権には、選挙権、被選挙権、国民審査権、国民投票権などがあり、民主主義を人類普遍の原理とし、国民主権原理を採用する日本国憲法において「基本的人権」として保障されています。
憲法15条
1項 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2項 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
3項 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
4項 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
この規定は、「基本的人権」としての参政権のうち、最も重要な選挙権を定めたものです。選挙権に保障される法的性格については、3つの説があります。
(1)公務説
これは、選挙権を選挙人の地位に基づいて公務員の選挙に関与する「公務」とみる考え方です。そのため、放棄できないという考えと結びつきやすく、選挙をするのは公務であり選挙をしなければならない、という考えに結びつきやすくなります。
(2)権利説
これは、選挙権を人民の主権的権利とみる考え方です。人民主導原理を採用する日本国憲法の下で、政治的意思決定能力を持つ人々が国家権力の行使に参加する当然の権利であるとの考えから導かれます。そのため、放棄できるという考えに結びつきやすく。選挙をしてもしなくても良い、と捉えることもできます。
(3)二元説(通説)
これは、選挙権には、賛成の権利とともに公務の執行という二重の性格が認められる、という考え方です。これは、選挙権は、人権の1つとされるに至った参政権の行使という意味において、権利であることに疑いはないが、公務員という国家の機関を選定する権利であり、純粋な個人権とは違った側面を持つからです。また、公職選挙法上、選挙犯罪による処刑者等は選挙権を行使できないこととなっていますが、(公選法11条)、これらは選挙権の公務としての特殊な性格に基づく必要最小限の制限といい得るからです。
参政権には選挙権以外にも、最高裁判所裁判官を罷免するかどうかを国民が審査する「国民審査権」(憲法79条)や、日本国憲法の改正について、全国民の投票をもってこれを行う国民投票権(憲法96条)などがあります。参政権、なかんずく選挙権の行使は「国民の固有の権利」であり、日本国憲法の民主主義原理の根幹をなすものと考えます。また、それは国民の民意を反映させるための制度である、とも言えるのではないでしょうか。
79条2項
「最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。」
96条1項
「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」
第三節 政治的無関心と投票率の低下
選挙は私たち国民の声=民意を政治に反映させるものです。しかし、その「民意」は現在政治に反映されるどころか、逆に国民が政治に対して「無関心」の状態となっています。日本国内全体としての政治的無関心が問題視されている昨今ですが、これには一体どのような背景があり、また、なにが問題なのでしょうか。
この「政治的無関心」を考えていく上で、1つの参考となるのが投票率の問題です。
では、本当に20代の若者は政治に対して無関心なのでしょうか。内閣府が行った「平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」によると、日本の若者に政治に対する関心度を聞いたところ,50.1%が『関心がある』(「非常に関心 がある」9.5%+「どちらかといえば関心がある」40.6%)と回答しています。この調査によれば約半分の若者は政治的関心があるということになります。ではなぜこの政治的関心が投票率に結びつかないのでしょうか。
出展:総務省HP「衆議院議員総選挙・参議院議員総選挙における年代別投票率の推移
http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/
」
出展:総務省HP「衆議院議員総選挙・参議院議員総選挙における年代別投票率の推移
http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/
」
近年、選挙の投票率は下がり続け、2014年12月に行われた衆議院議員選挙では52.66%と過去最低を記録しました。そして世代ごとに投票率を見ていくとき、特に20代の投票率が非常に低いことわかります。
これは、政治的関心がある=選挙に行く、という流れになっていない現状があるからです。 つまり、政治的関心がありながらも選挙には行かない若者が多いのです。その理由としては「誰がやっても同じだから」「難しくてわからないから」「支持する政党(政策)がないから」などの理由があるとされます。(2013年にマイナビが今春から新社会人となる二十代向けに行った「日本の政治に興味がないのは何故か?」と聞いたアンケート)
若者の投票率が低いという問題は、単に政治的無関心なのではなく、その背景には政治に対して関心はあるものの、それが「選挙」や「投票」という形に結びつかないという現実があるのです。
第四節 ネット選挙・18歳選挙について
1.ネット選挙
2013年4月に公職選挙法が改正され、インターネットを利用した選挙運動(以下:ネット選挙)が可能になりました。これはインターネットを使って投票ができる、というものではありません。ここでいうネット選挙とはインターネットを用いた選挙活動ができるというものです。海外では早い段階からネット選挙の制度が導入され、アメリカではオバマ大統領がアメリカ大統領選挙の際にスマートフォンやSNSを活用し、選挙戦を優位に進めたことは記憶に新しいと思います。そして日本においては2013年夏に行われた第23回参議院議員通常選挙からネット選挙が解禁となり、世間の大きな注目の的となり、実際に皆さんもスマートフォン等で見た方も多いと思います。さてこのネット選挙とは一体どのようなことを意図して成立したのでしょうか。
そもそも日本でネット選挙について議論がなされるようになったのは、1996年に当時の新党さきがけが旧自治省(現総務省)に対して問い合わせを行ったことに端を発します。その後、ネット選挙については様々議論がなされますが、日本政治はかたくなに選挙活動におけるインターネット利用を拒んできました。そこには多くの議論がありますが、結果的に、「有権者の選挙に関する関心を高める」「政策本位の選挙を実現する」「カネのかからない選挙を実現する」などの理由から、ネット選挙は解禁となったのです。
しかし、成立の目的とは裏腹に、ネット選挙解禁がもたらした影響は意外なものでした。ネット選挙が解禁されれば若者が投票に行き、ソーシャルメディア上では有権者を巻き込んだ政策論争が展開される…。そんな事前の期待は大きく裏切られることとなりました。「有権者の選挙に関する関心を高める」という目的、なかんずく若者の投票率の向上という問題に関しても、そもそも若者のネット選挙への関心が低いという点が解消されていないままでは、あまり効果的だとは言えないでしょう。また、根本的に選挙や政治に興味がない若者たちが、ネット選挙になったからと言って選挙活動を始めるというわけでもありません。この点から見ても、ネット選挙が若者にもたらした影響はあまりにも小さかったといえるでしょう。
とはいえ、今後はネット選挙がさらに活発となり、LINEやTwitter、FacebookといったSNSを活用した選挙運動がさらに活発化すると思われます。しかし、現状のような“候補者視点”のネット選挙では、有権者である国民、とくに若者が政治に対して関心を持つのは難しいと思います。より“有権者視点”に立ったネット選挙が進められていく中に、若者の関心度の向上、そして投票率向上への道があると考えます。
2.18歳選挙権
平成27年6月、公職選挙法等の一部を改正する法律が...