「法律行為の取消と登記」
法律行為の取消と登記の意義・問題点
法律行為の取消においては、一度契約が成立した法律行為を、制限能力・脅迫・詐欺等の条文に定められた理由において、意思表示を行うことによって遡及的に物件の変動が行われることであり、取消権者は原則として登記によらず第3者に対抗することができる。しかし、取消により物件が遡及的に変動する前には、現実には物件移動は行われており、登記の移転も行われている。そのため、取消時に登記が本人にないため、取消後も登記の移転が起こる可能性があり、不動産においては取消権者と第3者の対抗関係に登記が問題となる場合がある。また、詐欺による法律行為の取消においては、他の場合と異なり第3者保護規定があるため、登記の有無が問題となる場合がある。
以上のように、法律行為の取消には第3者の登記が取消前か後かによって対抗関係が変わる問題と、詐欺における法律行為の取消において対抗関係が変わる問題がある。
法律行為の取消と登記の論点と判例
前提条件として、A(取消権者)からBへ不動産の売却が行われ、登記の移動も行われているとする。その後にBからC(第3者)へこの不動産が売却されたものとする。
取消前の第3者と取消権者の関係
Aが脅迫等(詐欺以外)を理由に取消を行い、取消前にBC間で売買と登記の移転が行われた場合は民法第121条の「取消シタル行為ハ始ヨリ無効ナリシモノト看做ス」との規定より、遡及して契約は消滅することになる。そのため、AからBの売買はなかったこととなり、Bは無権利者となるためCとの間の売買も成立せず、Cは登記があっても保護されず所有権はAに移動する。これが物件における取消の原則である。判例においても、原告X(取消権者)が被告Y(第3者)に対してAからの強迫を理由にAの不動産の第1抵当権の登記抹消の取消を行い、取消前にA所有の不動産の第1抵当権を登記していたYに登記なくして対抗しうるかを求め原審がXの請求を棄却したことを違法としXが上告した事例において、大審院は登記なくともXはYに対して抵当権を対抗しうると判事している。(大判昭4・2・20民集5号59頁)
Aが詐欺を理由に取消を行い、取消前にBC間で売買と登記の移転が行われた場合は民法第96条3項によると「詐欺ニ因ル意思表示ノ取消ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス」と規定され、Aは登記の有無にかかわらず善意のCに対抗することはできないと考えることができる。判例においても、X(取消権者)がAに不動産を売却し登記の移転を行い、AはY(第3者)にこの不動産を譲渡して仮登記を行った。その後XがAの詐欺を理由とし取消を行い、Yに仮登記の抹消請求を起こした。原審はXの請求を認めたが、Yが自分は民法第96条3項の「善意の第3者」であると主張した請求を違法とした事例において、最高裁はYを「善意の第3者」としYに所有権を認めると判事した。(最判昭49・9・26民集28巻6号1213頁)
取消後の第3者と取消権者の関係
Aが脅迫等(詐欺以外)を理由に取消を行い、取消後にBC間で売買と登記の移転が行われた場合は取消による遡及効により、BからAへ所有権は移動するが、それとは別にBからCへも所有権が移動し、2重譲渡の場合と同様の物件変動となる。このような場合、Aは取消により所有権を持っているが、登記をBから自己に移すことが可能でありながら放置していたことになり(Aにも帰責が生じ)、Bの登記を信じたCの利益も保護されるべきであると考える。(Aに所有権がありながらBの登記としておくことは9
「法律行為の取消と登記」
法律行為の取消と登記の意義・問題点
法律行為の取消においては、一度契約が成立した法律行為を、制限能力・脅迫・詐欺等の条文に定められた理由において、意思表示を行うことによって遡及的に物件の変動が行われることであり、取消権者は原則として登記によらず第3者に対抗することができる。しかし、取消により物件が遡及的に変動する前には、現実には物件移動は行われており、登記の移転も行われている。そのため、取消時に登記が本人にないため、取消後も登記の移転が起こる可能性があり、不動産においては取消権者と第3者の対抗関係に登記が問題となる場合がある。また、詐欺による法律行為の取消においては、他の場合と異なり第3者保護規定があるため、登記の有無が問題となる場合がある。
以上のように、法律行為の取消には第3者の登記が取消前か後かによって対抗関係が変わる問題と、詐欺における法律行為の取消において対抗関係が変わる問題がある。
法律行為の取消と登記の論点と判例
前提条件として、A(取消権者)からBへ不動産の売却が行われ、登記の移動も行われているとする。その後にBからC(第3者)へこの不動産が...