『事例で学ぶ民法演習』の解答です。本書は、北海道大学の教授陣による民法の演習書です。本書は、家族法を除く財産法の全てを網羅しており、旧司法試験や予備試験レベルの中文事例問題で構成されています。
事例問題形式での民法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を総浚いするとともに、判例に則した見解で記述がなされており、現時点で、民法科目最高の問題集であります。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。特に,答案を書くにあたり,受験生が苦手とする「事実の評価部分」が充実していますので、司法試験対策には非常に有用な内容に仕上がっております。
そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有意義な内容となっております。
第34問
小問1
1 (1)
(1) AB間でCの所有する本件機械について賃貸借契約が締結されており(601)、これは他人物賃貸借である。そして、他人物賃貸借も有効である(559、601、560参照)。
(2) Bは目的物が他人物であることを知らなかったことから、錯誤無効(95)を主張することも考えられる。しかし、目的物が相手方所有であるか否かは、意思表示の錯誤ではなく、動機の錯誤に過ぎない。また、他人物賃貸借でも賃借権は発生する以上、基本的に「要素」の錯誤とはいえない。そのため、錯誤無効を主張することはできないのが原則である。
2 (2)
本件機械の所有者Cが、自身が所有者である旨主張した場合、AB間の法律関係はどうなるか。
(1) まず、Cが、本件賃貸借の「目的」である本件機械について「権利を主張」しており、借主Bは、本件機械を利用できなくなるおそれがあるから、対価である賃料の全部の支払いを拒むことができる(559、576)。
(2) 次に、CがBに対し、所有権に基づく本件機械の引渡請求をした場合はどうなるか。
ア 所有者が返還請求した場合、他人物賃貸借契約はどうな...