『事例で学ぶ民法演習』の解答です。本書は、北海道大学の教授陣による民法の演習書です。本書は、家族法を除く財産法の全てを網羅しており、旧司法試験や予備試験レベルの中文事例問題で構成されています。
事例問題形式での民法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を総浚いするとともに、判例に則した見解で記述がなされており、現時点で、民法科目最高の問題集であります。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。特に,答案を書くにあたり,受験生が苦手とする「事実の評価部分」が充実していますので、司法試験対策には非常に有用な内容に仕上がっております。
そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有意義な内容となっております。
『事例で学ぶ民法演習』 解答 第29問
小問1
1 Cの甲債権支払い請求は認められるか。
(1) Cは、Aから甲の譲渡を受け(466Ⅰ)、Bにその旨を通知しているから、債務者Bに譲渡を対抗できる(467Ⅰ)。そのため、Cによる甲支払い請求は認められそうである、
(2) 対して、Bは乙債権による相殺(505Ⅰ)を主張することができるか。
現時点で甲はCに移転している一方、乙はAを債務者とするから、「二人が互いに」(505Ⅰ)にあたらないのではないか。
債権譲渡において、債権者が通知をしたにとどまるときは、通知を受けるまでに債権者に対して生じた「事由」で譲受人に対抗できるところ(468Ⅱ)、相殺適状にあることは、相殺権として「事由」にあたる。
本件では、AからBへの通知までに、AからBへの甲と、BからAへの乙が対立しており、既に弁済期も到来していたのであるから、相殺適状にあったといえる。そのため、Bは、乙による相殺を甲の譲受人Cにも対抗できる。
(3) したがって、Bの主張は認められ、Cの請求は認められない。
2 Aの債権者Dによる債権執行としての差押え(民執143)に対し、Bは...