『事例で学ぶ民法演習』の解答です。本書は、北海道大学の教授陣による民法の演習書です。本書は、家族法を除く財産法の全てを網羅しており、旧司法試験や予備試験レベルの中文事例問題で構成されています。
事例問題形式での民法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を総浚いするとともに、判例に則した見解で記述がなされており、現時点で、民法科目最高の問題集であります。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。特に,答案を書くにあたり,受験生が苦手とする「事実の評価部分」が充実していますので、司法試験対策には非常に有用な内容に仕上がっております。
そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有意義な内容となっております。
事例で学ぶ民法演習 第12問
1 小問1
(1)Aは、Bに騙されCに対し本件土地売買の意思表示をしている。
この場合、Aは、「第三者」たるBの詐欺により、「相手方」たるCに意思表示をしたとして、CがBによる詐欺の事実を知っていたときに、売買契約の意思表示を取り消すことができる(96条2項)。
詐欺による取消がみとめられると、売買契約は、遡及的に無効とみなされる。(121条)
そのため、AC間の売買契約は無効となる結果、Cは無権利者となるので、CD間の売買は物権的には無効であり、Dに本件土地所有権が帰属しないのが原則である。
(2)もっとも、詐欺による意思表示の取り消しは、善意の第三者に対抗できない(96条3項)
そして、同項は、取り消しによる遡及効によって法的地位を覆される者の保護を趣旨とするので、「第三者」とは、当事者及び包括承継人以外の者で、取り消し前に権利関係にはいった者を言うと解する。
本件では、転得者Dは、Aの意思表示の取り消し前にCから本件土地を譲り受けており、「第三者」に該当する。
したがって、DがAC間の売買が詐欺による意思表示...