事例演習民事訴訟法 第3版(新版)の解答です。事例問題形式での民亊訴訟法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を網羅するとともに「考えさせられる」良問が揃っているため、民事訴訟法における最良の演習書であると考えます。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有効な内容となっております。
事例演習民事訴訟法
問題7
1.本件訴訟の経緯から見て、本判決理由には如何なる問題が有るか。
具体的には、①Xは一度認めたBA間の建物売買の事実について自白した後、これを撤回しているが、これは弁論主義との関係で認められるか。②Xの自白に関して、裁判所の対応に何か問題はあったか、が問題となる。以下、順に検討する。
2.①について
(1)弁論主義とは、民事訴訟法における当事者主義のあらわれの一つであり、事実・証拠の収集を当事者の権能と責任に委ねるという原則をいう。
(2)ア.では、弁論主義は、如何なる範囲の事実に適用されるべきか。 思うに、権利の発生、変更、消滅を定める規範の要件に直接該当する具体的事実たる主要事実は、訴訟の勝敗に直結するものであり、当事者の意思の尊重及び不意打ち防止の見地から主張責任の対象とすべきである。一方で、間接事実や補助事実は、主要事実の存否を推認する資料となる点で証拠と同レベルにあるため、これらの事実にも弁論主義の適用があると、裁判官に不自然な判断を強いることになり、自由心証主義(民事訴訟法247条)に反する危険がある。 したがって、主要事実にのみ弁論主義は...