会社法事例演習教材 第二版の解答です。問題は紛争解決編(第Ⅰ部)と紛争予防編(第Ⅱ部)に別れており、それぞれ12テーマずつ。会社法における最良の演習書であると考えます。
解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。 そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、充実した内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有効な内容となっております。
Ⅱ-1 株式・社債による資金調達(1)
1-1 株式の払込債務と会社に対する債権の相殺
(1) 会社に対する債権と株式払込債務の相殺(小問(1))
Q1 募集株式の引受人は、会社に対する債権と払込債務とを相殺することができるか。
資本充実の要請上、払込金額の払込みにつき、募集株式の引受人側から、会社に対する債権を自働債権とする相殺を主張することは許されない(208条3項)。
Q2 会社は、募集株式の引受人の払込債務(出資履行債務)と会社が募集株式の引受人に対して負う債務とを相殺することができるか。
会社にとって、出資者に対する債務につき弁済期が到来しているときは、出資者からの払込金を弁済期の到来した債務(会社に対する債権)の弁済に充てることができ、相殺で処理したのと同じ結果になるから、そのような相殺を禁止する理由はないので、会社の側から相殺することについては、禁じられないと解する(大判明治45.3.5)。
これに対して、払込取扱金融機関への払込みまたは現物出資の調査を定めた規定の脱法になるから認められないと解することもできる(昭和39.12.9民事甲代3910号民事局長通達)とがある。...