会社法事例演習教材 第二版の解答です。問題は紛争解決編(第Ⅰ部)と紛争予防編(第Ⅱ部)に別れており、それぞれ12テーマずつ。会社法における最良の演習書であると考えます。
解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。 そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、充実した内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有効な内容となっております。
設例6-1
Q1 一般に経営判断のミスによって損害が生じた場合、取締役は善管注意義務違反か
取締役は、善管注意義務違反(330条・民644条)の業務執行により会社に生じた損害を賠償する義務を負う(423条1項)。しかし、業務執行にはリスクが伴ううえ、不確実な状況で迅速な判断を迫られる場合が多い。それにもかかわらず、リスクが顕在化した場合に、経営判断について事後的結果論的な評価がなされると、取締役の経営判断を萎縮させ、会社の利益の最大化を図ることができず、ひいては株主の利益をも損ねる。
そこで、善管注意義務が尽くされたかは、行為当時の会社状況や社会情勢に照らし、経営判断の前提となる事実につき事実の認識(情報収集・調査・検討)に不注意な誤りがなかったか、当該会社の属する業界における通常の経営者の有すべき知見及び経験を基準として、不合理な判断がなされなかったかを基準として判断すべきである。
Q2 うなぎの買い入れについて、Aの任務懈怠はあるか
行為時の状況に照らしてAの買い入れの判断をみる。
まず、食料品の販売を業とするP社にとって、仕入先の決定にあたっては、仕入品の産地、品質、価格、仕入...