②トルコにおける世俗化とイスラームの相克について
非西洋世界における伝統と西洋化の関係、西洋近代の対立といった問題は、依然として今日的な問題である。とりわけ非西洋社会の中で、今日西洋キリスト教社会とさまざまなレベルで軋轢を起こしているイスラーム社会(キリスト教対イスラム教がイラク戦争や911など様々な悲劇を生んでいる)は、西洋化にどのように対応してきたのだろうか。
もちろん一口に「イスラーム社会」といっても世界中にはさまざまな国が存在し、西洋近代への国家としての対応も一様ではないが、ここでは、イスラーム文明から抜け出て、ヨーロッパ文明という別の文明へ移行することを目指し、そのためにさまざまな問題を抱えるに至ったトルコという国の近現代を生きた2人の人物-ムスタファ=ケマル=アタルテュク(1881~1938)、ベディユズザマン=サイド=ヌルスィー(1876~1960)を中心にみていく。
軍人ムスタファ=ケマル=アタルテュク(以下アタルテュク)は、1915年に第一次世界大戦のガリポリの戦いで、イギリス・フランス連合軍を撃破した英雄として登場し、1919年トルコ国民自由戦争のカリスマ的リ...