生徒理解と教育相談 第二分冊 <共感的理解>
いじめの事例を取り上げて、共感的理解を試みよ。
<注意点>
事例という場合には、事例研究法による事例である。
いじめの事例 中学二年 男子M君の場合
小学校4年時に麻疹にかかり4週間学校を休んだ。治癒後登校に対して顕著なしぶりが生じた。この長期の休みを機にM君はクラスの中では問題を起こすでもなく,目立たない存在となっていった。6年生になってA,B,C,D,Eの5名からなる遊びグループに加わり,よく遊ぶようになった。しかし父親はそれを勉強がおろそかになってきたとしてとらえ,M君の行動に関して口出しし始め,クライエントの家庭内での言葉数は急速に減少した。中学1年2学期頃よりさらに「元気がない」状態が顕著になり,また原因不明のけがなどが見つかることが多くなった。 中学2年時にいじめの現場を担任が発見(いじめ側の生徒は前述の遊びグループのメンバー)。グループのメンバーは,リーダーのA以外はクラス内でも目立たない生徒であった。中学1年時にAと他校の不良グループとのかかわりが話題にされるようになった。グループ以外のメンバーがクライエントを遠巻きにして騒いでいる場面も目撃されている。
M君への共感的理解
まず、共感的理解とは、カウンセラーが面接場面でクライエントの私的な世界をあたかも自分自身のように感じ取り、クライエントの経験や感情を正確、敏感に受け取ることをいう。
そしてこの共感的理解を試みるためには、クライエントとのカウンセリングは欠かすことができない。カウンセリングにあたっては、カウンセリングマインドをもって、クライエントに接することがカウンセラーにとっては大切なことである。
カウンセリングマインドの意味するカウンセリングの心構えや態度としては、具体的に次のようなことが挙げられる。
①子どもの成長への衝動を尊重し可能性を信じる。
②子どもの言動には、その子なりの真実がある。それをその子の考え方・感じ方に立って理解に努める。
③言葉でのふれ合い以上に、感情的なふれ合いを大切にする。
④教え与えることに性急にならずに、自分で考える力がそだつかかわりを工夫する。
⑤子どもの自尊心を大切にしながら、一緒に考え、新しい発見や感動を共にしていく。
⑥子どもをどれだけ受容できるか、どれだけ寄り添えるかという教師の柔軟さを、自己成長の課題として取り入れていく。
⑦学級集団が持つグループ・ダイナミックスの価値を尊重し、教師も集団の一員であることを自覚し、子どもと同じ土俵に立つ。
以上の7点のような教師の姿勢・内面活動が子どもの自己理解を促進し、彼らの可能性の発揮を援助していくことになる。それがしいてはカウンセリングマインドにそった教師の指導といえる。それでは、これらのことをふまえて、M君への共感的理解を試みる。
M君への共感的理解を試みるにあたって、まずいじめの状況について理解していかなくてはならない。M君にいじめが起こるまでの経緯を話してもらう。その時に大切なことは、M君の訴えに対して傾聴することである。そしてA君側から聞いたことと話が食い違っていたとしても、M君をとがめることなく誠心誠意傾聴するのである。M君の訴えをよく聴く前に、その訴えの是非の判断を下してしまってはいけない。それでは、M君はもうそれ以上話をしようという気にはならないであろう。自分の話を親身に聴いてくれる人が存在しているということを実感できれば、それだけで救われ、心が解きほぐされていくきっかけになることも多い。
続いて、M君の学校環
生徒理解と教育相談 第二分冊 <共感的理解>
いじめの事例を取り上げて、共感的理解を試みよ。
<注意点>
事例という場合には、事例研究法による事例である。
いじめの事例 中学二年 男子M君の場合
小学校4年時に麻疹にかかり4週間学校を休んだ。治癒後登校に対して顕著なしぶりが生じた。この長期の休みを機にM君はクラスの中では問題を起こすでもなく,目立たない存在となっていった。6年生になってA,B,C,D,Eの5名からなる遊びグループに加わり,よく遊ぶようになった。しかし父親はそれを勉強がおろそかになってきたとしてとらえ,M君の行動に関して口出しし始め,クライエントの家庭内での言葉数は急速に減少した。中学1年2学期頃よりさらに「元気がない」状態が顕著になり,また原因不明のけがなどが見つかることが多くなった。 中学2年時にいじめの現場を担任が発見(いじめ側の生徒は前述の遊びグループのメンバー)。グループのメンバーは,リーダーのA以外はクラス内でも目立たない生徒であった。中学1年時にAと他校の不良グループとのかかわりが話題にされるようになった。グループ以外のメンバーがクライエントを...