<事実> 横浜地裁 H7.3.28 判決
被告人Xは、平成三年四月十三日午後八時三十五分頃、神奈川県の東海大医学部付属病院の本館六階6B病棟十四号室に赴いて、多発性骨髄腫で入院していたB(当時五十八歳)に対し、患者がすでに末期状態にあり死が迫っていたものの、苦しそうな呼吸をしている様子を見た長男から、その苦しそうな状態から解放してやるためすぐに息を引き取らせるようにしてほしいと強く要請されて、患者に息を引き取らせることを決意し、殺意を持って、徐脈、一過性心停止等の副作用のある不整脈治療剤である塩酸ベラパミル製剤(商品名「ワソラン」注射液)の通常の二倍の使用量にあたる二アンプル四ミリリットルを患者の左腕に静脈注射をし、患者の脈拍等に変化もみられなかったことから、続いて、心臓伝導障害の副作用があり、希釈しないで使用すれば心停止を引き起こす作用のある塩化カリウム製剤(商品名「KCL」注射液)の一アンプル二十ミリリットルを、希釈することなく患者の左腕に静脈注射をし、途中患者の心電図モニターに異常を発見した門川看護士が、心電図モニターを病室に運んできて、「心室細動が出ています。」と声を掛けた...